ヤクザは17年連続減少で2万4100人に 見えてきたカタギ組の収支決算
暴力団の“人件費圧縮”
まさに「転んでもただでは起きない」というところだろうか。
これだけ暴力団が社会悪と見なされていても、「組員になりたい」という若者は一定数存在する。こうした会社は、彼らの“受け皿”としても使われるという。
「今は暴対法でがんじがらめに締めつけられていますから、組員であることのメリットが減っています。暴力団に入りたいという若者がいたら、組が迎え入れるのではなく、そうした会社で雇用させるのです。暴対法の対象外となりますし、給与も会社から出させれば、組の“人件費圧縮”にもつながります」(同・藤原氏)
整理すると、今の暴力団周辺にはこんな男たちが蠢いていることになる。
【1】本当に暴力団を辞めてカタギになった元組員
【2】本当に暴力団を辞めたが、地下に潜って“ハイリスク・ハイリターン”の非合法ビジネスに乗り出す元組員
【3】暴力団を“偽装脱退”して会社を経営し、組に“上納金”を収める組員
暴力団の“栄光と没落”
長年にわたって暴力団を取材する藤原氏からすると、現状はまさに“隔世の感”があるという。
「暴力団は社会悪ですが、それでも70年代から80年代にかけては、魅力的な人物が多かったのも事実です。取材をしていても、彼らはやりがいを感じていました。ところが日本がバブル経済に突入すると、ヤクザの世界でも拝金主義が横行するようになりました。あの時が取材対象としての魅力が減少したと感じた最初でしたね」
だが、バブル経済は崩壊し、「金がなければヤクザじゃない」という時代も過去のものとなった。今は金がなくて途方にくれているヤクザばかりだという。
「昔のヤクザは、そのほとんどが組長を目指し、熾烈な出世争いを繰り広げていました。それこそ後継処理に失敗すると、跡目争いが起きることも珍しくなかった。ところが今は、『親分が辞めたら俺たちも辞める』と組員の誰もが口を揃えます。暴力団という組織の興隆と絶頂、そして没落をつぶさに見る機会に恵まれたのはジャーナリスト冥利に尽きますが、一抹の寂しさも感じてしまいますね」(同・藤原氏)
10年後の暴力団
ただし、少なくなったとはいえ、40代から50代の組長も存在する。引退など全く考えていない組長だ。藤原氏は、ジャーナリストとして彼らの“未来”に興味を覚えるという。
「彼らは何とか組を切り盛りしています。このご時世に、根性が据わっているなと感心してしまうのも事実です。10年後、20年後、彼らはどういう形で組を運営しているのか、もしくは組を運営できなくなっているのか、というテーマは、今後も取材・ウォッチを継続するだけの価値があると考えています」(同・藤原氏)