中国が早くも「尹錫悦叩き」、米国は「なんちゃって親米はやめろ」

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日本の外務省までコメント

 VOAは念を入れました。3月25日には「日本外務省、尹当選者の公約に『Quad内には参加国拡大論議なし』」(韓国語版、発言部分は英語と韓国語)を載せました。米国務省が運営するVOAが外国政府のコメントを載せるのは極めて異例です。

 VOAの質問に答え、日本の外務省も「日米豪印がQuad拡大を話し合ったことはない」と韓国を突っぱねたのです。

・To date, there have been no specific discussions among Japan, the U.S., Australia, and India about expanding the number of participating countries.

 さらに「日本は『自由で開かれたアジア太平洋』(FOIP)の実現に向け、その構想を共にするより多くの国々と様々の試みを通じ連携を深めて行く」と付け加えました。

・In any case, Japan will continue to deepen its partnership with more countries that share its vision through various initiatives toward the realization of a “Free and Open Indo-Pacific”.

 わざわざ「門は開けてある」とのくだりを入れたのは、韓国の責任転嫁を批判するためでしょう。韓国の外交関係者は「Quadには参加したいのだが、日本が邪魔するので入れない」と言って回っています。その嘘をVOAは暴き、言い訳を封じたのです。

「FOIPの構想を共にする国」と連携相手を限定したのは「Quadに入らないのは、中国が怖いからだろ?」と、韓国の本音を突いた嫌味です。

 3月中旬、尹錫悦氏周辺は日本に対し「米国は韓国のワーキング・グループ入りを歓迎している」と言って日本の賛成を引き出そうと画策。そのうえで今度は米政府に「Quad首脳会議のホスト国、日本が望んでいる」と言って、東京での会議に「+1」として招待させる作戦だったようです。

 VOAは――米政府は、日米双方の外交当局の談話を発表することで、韓国の子供だましの詐術を暴いたわけです。

「最も弱い輪」なのに勘違い

――韓国はそんなペテン外交を本気で考えていたのでしょうか。

鈴置:韓国人はこうした小陰謀が大好きなのです。すぐ見破られてしまうのですが。少なくとも、Quadの準メンバーになって「米国側に戻った」フリをするという構想の証拠はあがっています。

 中央日報の金玄基(キム・ヒョンギ)巡回特派員兼東京総局長が「【時視各角】ガラパゴス外交から抜け出す=韓国」(3月17日、日本語版)で告白しています。以下です。

・5月末に東京で開催される予定のクアッド(日米豪印)首脳会談が良いきっかけになるだろう。韓国が「クアッド+1」の形で参加することを積極的に推進するのがよい。
・その場で韓日米3カ国首脳会談、韓日、韓米首脳会談のすべてが可能だ。尹錫悦政権の外交方向を対内外に一度に見せる絶好の機会だ。
・別途の単独会談の負担を減らし、7月の参議院選挙まで活動が制限される岸田首相の立場にも配慮できる。米国も拒否しないはずだ。

――「米国も拒否しないはずだ」とありますが、直ちに拒否されてしまった……。

鈴置:韓国は勘違いしています。自分が米国側に戻ると言えば、米国や日本が温かく迎えてくれると信じ込んでいる。本気で戻るのならともかく、韓国は中国と向き合う覚悟もなく、形だけ戻ろうというのですから。それはQuadにとって大きなマイナスです。

 中国は枠組みの最も弱い輪を攻撃することで対中包囲網を破ろうとします。米国とすれば、わざわざ韓国という「弱い輪」を作るわけにはいかないのです。

恩知らずで愚かな韓国

 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻しました。その瞬間、米国の同盟国はすべてロシア制裁に立ちあがりましたが、韓国だけは曖昧な立場に終始したのです。

 2月26日、VOAは韓国に詳しい専門家を集めて座談会を開きました。「[ワシントン・トーク]韓国、ウクライナ事態に微温的…米国との同盟から離脱するな」(韓国語版)です。核軍縮の専門家、M・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)CSISフェローは以下のように述べました。

・今回のロシア侵攻に対する国際的な対応の特徴の1つが米国とほとんどの同盟国がひとつの心、ひとつの意思で行動した点だ。ある1国[韓国]を除き、すべてがロシアに対し厳格な制裁を加えた。
・韓国の小心で微温的な手法は率直に言って恥ずかしいものであり、愚かである。恥というのは、韓国は過去に侵略の被害者として大々的な援助を貰ったし、それが再び起これば助けをまた受けるからだ。
・韓国の経済規模はロシアよりも大きい。それにも関わらず、じっと座り込んで多者間の措置だけをとるつもりだと言っている。
・しかし、多者的な制裁はすでに施行されている。米国のほかのすべての同盟国はその措置をとった。そのうち、一部は独自の措置をとっている。韓国も前に出て同じようにせねばならない。

「恩知らず」と非難したうえ、対ロ制裁にきちんと加わるよう韓国をせかしたのです。朝鮮半島が専門の米外交問題評議会のS・スナイダー(Scott Snyder)上級研究員は「自分勝手な国から、そろそろ卒業しろ」と韓国に迫りました。

・これまで韓国は目立たないようにして、自分の経済的な利益にのみ集中する傾向があった。だが、韓国は絶対に退いていけない時点に来ている。

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