マスターズの「招かれざる選手」となったミケルソン “カネ”への執着で誰も助け船を出さない自業自得
インサイダー取引に関与か
2013年1月、ヒューマナ・チャレンジ(現ザ・アメリカン・エキスプレス)最終日のプレーを終えたミケルソンは米メディアを前にして、プレーに関する話をせず、こともあろうに「税金が高すぎる」と言い始めた。
折りしも、当時のオバマ政権が「財政の壁」回避のための暫定的打開策として、年収45万ドル以上の富裕層のみを増税対象とすることを発表したころだった。
「(増税対象の)カテゴリーに入ってしまった僕は、国税と州税を合わせると62~63%の税金を課せられる……。もう、カリフォルニア州から脱出しようかな」
同州のサンディエゴで生まれ育ったミケルソンが、故郷の州で開催された大会の会場で、高い税金を回避するために故郷から脱出すると言ったことは、当然ながら物議を醸し、後日、彼は「公言すべきではなかった。お騒がせしてすみませんでした」と謝罪した。
そんな出来事に追い打ちをかけたのは、翌2014年のメモリアル・トーナメント初日のこと。FBIの捜査官2名が試合会場にやってきて、ミケルソンを別室に呼び、事情聴取を行った。ラスベガスのギャンブル王、ビリー・ウォルター氏らが行った2011年のインサイダー取引にミケルソンも関与しているのではないかという嫌疑だった。
忘れもしない。私もあのときミケルソンが事情聴取を終えるのを米メディアとともにインタビュールームで待っていた。そこへやってきたミケルソンは「みんな怖い顔して、どうしたの? 僕は何も悪いことはしていない。ちゃんと説明して嫌疑は晴れた。だから心配することは何もない」と笑顔を見せた。
新ツアー創設構想に誰よりも傾倒
しかし、あのころからミケルソンに関する「グレーな噂」「マネーの噂」が、しばしば聞かれるようになったことは事実。それが「いかにもミケルソンらしい」とまで言われるようになった。
そして、この1年半ほどの間、高額なアピアランスフィーや移籍料、破格の賞金で選手たちを呼びよせようとしているサウジ勢力とグレッグ・ノーマンによる新ツアー創設構想に誰よりも傾倒し、選手たちのリクルート活動を精力的に行っていたのがミケルソンだった。
現状では、トッププレーヤーのほぼ全員がPGAツアーへの忠誠を誓い、新ツアーへ移籍予定の選手は皆無となって、彼らの構想は一時的に頓挫したかに見える。
その状況下で、冒頭で触れたミケルソン発言が拡散されて問題視された。PGAツアーからもオーガスタ・ナショナルからも仲間たちからもそっぽを向かれ、ミケルソンただ一人が「悪者」のようになってしまった。まさに八方塞がりだ。
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