事件現場清掃人は見た アパートで60代男性が孤独死、大家の意外すぎる言動に驚いた
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、一昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、孤独死した60代男性と大家の特別な関係について聞いた。
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今回ご紹介するのは、高江洲氏がこれまで一度しか経験したことのないケースである。
「関西に住む女性から電話で依頼がありました」
と語るのは、高江洲氏。
「今年1月、東京の下町にある築50年以上の木造アパートで、60代の叔父が孤独死したといいます。卓袱台にうつ伏せになった状態で亡くなっていて、病死でした。死後1週間以上経ってから発見されたそうです」
卓袱台のそばには、石油ストーブがあった。
「安全装置が作動したようでストーブの火はすぐに消えたのでしょう。室内の温度が高い状況が続くと遺体から体液が出てしまいます。しかし、部屋にはほとんど汚れはありませんでした」
物腰が柔らかく感じのいい人
部屋の間取りは、2Kだった。
「亡くなった男性は会社員だったそうで、定年後、年金暮らしをしていたといいます。部屋の中には余計なものはなく、綺麗に片付けてありました。日当たりも良く、湿気もこもってなくて、生活空間としては全く問題ありませんでした。」
高江洲氏は、知り合いの葬儀社を手配。遺族が上京し、男性は荼毘にふされた。
「男性が亡くなった部屋は、いくら汚れが少ないとはいえ事故物件扱いになるので、リフォームすることになりました。私は見積もりを出し、アパートの近くに住む大家の家に向かいました」
大家は一見して人の良さそうな70代くらいの男性だった。
「私が乗ってきたトラックを見て、『ここに止めていいからね』と言ってくれました。物腰が柔らかくて感じのいい人でした」
高江洲氏の経験上、通常、店子が孤独死すると大家は怒り出すことが多いという。
「事故物件になり、不動産の価値がかなり下がるからです。中には、遺族に怒鳴り散らす大家もいました。30代の男性がアパートで孤独死した時は、大家が男性の母親に向かって『次の入居者も決まっていたのに、お前のせがれのせいで契約が解除になっちまったじゃねえかよ!気味が悪いって隣の部屋も出て行ってしまった、どう責任取ってくれんだよ!』と。こんな修羅場は何度も見てきました」
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