「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言

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市民をこのまま押さえつけられるのか

 国内外で孤立を深める現代の暴君。

 前出・名越教授は、

「どれだけ孤立しても、プーチンが撤収、譲歩、妥協をすることはない」

 と言う。

 しかし、各国の経済制裁強化により、国民生活への打撃は強まる一方で、

「ここに来て、これまで世界の戦争で様子見をしていた永世中立国のスイスが重い腰を上げ、制裁に参加しましたが、これは大きい。スイスに資産をため込んでいる富豪も多いですから痛手となるでしょう。4月には国債もデフォルトするでしょうし、そうなれば打撃はさらに大きくなる」(同)

 前出・佐々木教授も言う。

「プーチン体制が強固なことには違いありませんが、さりとてソ連崩壊後、まがりなりにも欧米流の自由と開かれた言論空間の風を30年も受けてきた市民を、このまま押さえつけることができるかどうか」

 いかに最狂の独裁者といえども、歴史という時計の針を巻き戻すことは不可能だ。

プーチンを頂点とする“山分けシステム”

「ロシアの権力構造は、プーチンを頂点とする“山分けシステム”で成り立っているわけです」

 とは、東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠・専任講師。

「プーチンに忠誠を誓っていれば、石油や天然資源から上がる莫大な利益の分配を得られる。逆に言えば、プーチンはこの山分けの利益を与えることによって、何百人のエリートを鼓舞し、従わせてきたのです。しかし、今回の経済制裁を受け、このシステムが他ならぬプーチン自身の暴走によって、崩壊の危機に瀕している。今後、政権内部から“もう彼を担ぐメリットはない”という動きが出てくるかどうか。そしてその場合、プーチンがかつてのスターリンのように、そうした動きを徹底的に粛清するかどうか。いずれにせよ、プーチンがこのまま安穏と権力の座を維持していられないことは間違いありません」

 その先にあるのはクーデターか暗殺か。

 冒頭のAP通信によるマリウポリレポートに戻れば、砲撃を受けた女児を治療していた医師が、取材のカメラを見据えてこう怒鳴る場面がある。

「プーチンにこの子の目を、泣いている医者たちを見せてやれ!」

 地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか。

週刊新潮 2022年3月31日号掲載

特集「『プーチン』地獄へ」より

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