「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言
国際的地位の失墜
「焦燥の皇帝」はもはや末期症状を迎えた感もある。
「今後、ロシアの国際的地位が失墜し、大国の地位から引きずり降ろされることは間違いありません」
と述べるのは、同志社大学の浅田正彦教授。
国際法の権威である浅田教授に、プーチンの犯した罪がいかに重いかを解説してもらうと、
「まず国連憲章違反です。国連憲章の柱である2条4項は『武力による威嚇』及び『行使』を禁止している。それに明確に違反したことになります」
これに対してプーチンは、ドネツク、ルガンスクの二つの「国」から要請があり、集団的自衛権を行使した、それは2条4項の例外である、と主張しているが、
「これは通りません。まず二つの州はロシア以外の国からは独立国として承認されておらず、国際社会から国家として認められているとはいえません。国家でないものからの要請は集団的自衛権行使のベースとはなりえません」
実際に行われた戦闘行為についても、ロシアは数々の罪を犯している。
「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」
と浅田教授が続ける。
「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れがありますね」
「プーチンを裁けない」は誤解
問題は、こうした「戦争犯罪人」プーチンを実際に裁くことができるのか、ということである。
責任の追及は、国家に対して行われるものと、個人に対して行われるものに分かれる。前者を扱うのは国際司法裁判所(ICJ)、後者を扱うのは国際刑事裁判所(ICC)だ。
既に両者で手続きが開始されているが、浅田教授がより実効性の高いものとして注目するのは後者である。報道では、「ロシアもウクライナもICCに加盟していないからプーチンを裁けない」と解説されることがあるが、
「正確ではありません。ウクライナは確かに締約国ではありませんが、7年前に無期限で戦争犯罪等について管轄を受け入れると宣言しているため、ICCは本件の手続きを開始することができるのです」
となればあとは、法廷にプーチンを引きずり出せるかどうか。彼に逮捕状が出た場合、どうなるのだろうか。
「その場合、プーチンがICCの締約国を訪れた際に、その国は彼を逮捕してICCに引き渡すことが締約国として義務付けられることになります。実際に逮捕することは、その国にとって、ロシアと決定的に敵対するというリスクを背負い込むことになりかねないだけに難しいかもしれませんが、逆に逮捕をしなければ、その国はICC規程に違反することになる」
つまり、仮にプーチンが来日することがあれば、日本政府は彼に手錠をかけてしまえばいいのである。まあ、岸田首相がそこまでの度胸の持ち主だとは到底思えないが……。
いずれにしても、
「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」
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