「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言
新生児の死体も
塹壕に折り重なる遺体には、頭部を榴散弾で飛ばされた1歳半の乳児や、爆風で足を吹き飛ばされた16歳のサッカー青年のものなどもあるという。
「しかし、そうしたケースはまだましかもしれません。病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている。中には臍の緒が付いたままの新生児の死体もあるそうです」
当局が発表する死者の数は2500人だが、本当のところは定かではない。
思い起こされるのは、第2次世界大戦時、ドイツ軍に900日近くも取り囲まれ、破壊された「レニングラード包囲戦」。100万人が死に、その97%が餓死だったというナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めているのである。
ロシア軍の死者は7千人
2月24日に始まった戦いから1カ月余り。隣国に攻め込んでいるはずのロシア軍は、逆に日に日に追い込まれている。
「アメリカの報道によれば、開戦以来、ロシア軍の死者は7千人に上っているといいます」
と解説するのは、元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授である。
「これはアフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまったのです。プーチンにとってこれは大誤算でしょう」
被害は一般兵に留まらず、
「20名いたロシア軍将官のうち、既に5人が戦死しています(取材当時)。セキュリティーで保護されていない携帯を使っていたことでウクライナ側に盗聴され、ピンポイントでスナイパーに撃たれたようです。ここにもロシア軍の慢心が表れていますよね」(同)
停戦交渉も断続的に開かれてはいるが、双方の主張に隔たりが大きく、進展を見せていない。
こうした苦境を感じてか、
「3月中旬以降、ロシアの世論にも大きな変化が読み取れます」
と述べるのは、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明・大和大学教授である。
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