ロシア軍 将官クラス「7人死亡」報道の衝撃 専門家は「旧日本軍のインパール作戦と似た状況か」
指揮・命令系統の崩壊
ちなみに、ロシアが正式に死亡を発表した指揮官は、アンドレイ・スホベツキー少将の1人だけである。とはいえ、少将レベルの軍人が最前線で戦死するということ自体が、既にレアケースなのだという。
「少将といえば、師団長クラスです。通常、師団本部は、戦線の後方に構築されます。師団長は、比較的安全なところに陣取り、部下に指示を出すのが仕事です。佐官や尉官といった中・下級士官が前線で現場の指揮を執るはずで、だからこそ将官クラスの軍人が戦死するケースは異例なのです」(同・菊池氏)
将官クラスが7人も前線で死亡したというニュースを目にした菊池氏は、90年代後半にロシア海軍を取材した時のことを思い出したという。
「ソ連が崩壊したため取材の許可が下りたのです。ウラジオストクの潜水艦隊を訪れたのですが、普通の潜水艦なら全乗組員のうち士官が占める割合は1割くらいでしょう。ところがロシア海軍の潜水艦は、その倍くらいの士官が乗っていたのです。不思議に思って理由を訊くと、『命令しても水兵は言うことを聞かない。そのため命令に従う士官を増やしている』という答えが返ってきて驚きました」
作戦計画の誤り
ウクライナに侵攻したロシア陸軍も、似た状況の可能性があるようだ。
「これまでウクライナのロシア軍は『兵士の士気が低い』と報道されてきました。それは事実なのでしょうが、最前線では指揮・命令系統が混乱しているものと思われます。将官クラスが前線で指揮を執っているとなると、尉官や佐官という小隊長、中隊長クラスの軍人さえ命令に背いている事態も考えられます。軍隊としての統率が全く取れていないのかもしれません」(同・菊池氏)
思うように戦果を挙げることができず、ウラジーミル・プーチン大統領(69)は激怒する。焦った将官が最前線へ向かい、部下を督戦する。だが、ウクライナ軍の狙撃兵からすれば、格好の餌食になるだろう。
「結局、当初の作戦計画から間違っていたのです。プーチン大統領は、ロシア軍が侵攻すればウクライナ軍は総崩れとなり、数日で片が付くと考えていた節があります。そうなると、弾薬も食料も、せいぜい1週間分しか用意していなかったと思います」(同・菊池氏)
だが予想に反し、ウクライナ軍は必死に抵抗した。ロシア軍は武器も食料も欠乏してしまったが、“短期決戦”の計画だから補給を考えていなかった。
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