〈カムカム〉最大の謎「アニー・ヒラカワ」の正体 そして物語はどう決着するのか
NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」が大詰めを迎えた。アニー・ヒラカワ(森山良子)は何者なのか。物語はどう決着するのか。興味が尽きないことから、4月8日の最終回は1999年度後期作品「すずらん」以来の視聴率30%超えもありそうだ(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。
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終盤になって生まれた最大の謎はアニー・ヒラカワの正体。ハリウッド映画「サムライ・ベースボール」のキャスティング・ディレクターであるものの、違った顔があるのは間違いない。
アニーはひなた(川栄李奈)に向かって、こう英語で言った。
「英語の勉強、これからも続けてください。きっとあなたをどこか思いもよらない場所まで連れていってくれますよ」(第102話、2001年)
この言葉は第32話でGHQ中尉のロバート・ローズウッド(村雨辰剛)が岡山を去る際、安子(若年期は上白石萌音)に向かって口にした言葉と全く同じ(第32話)。偶然とは思えない。アニーは安子なのか。
アニーは「日本に来るのは初めてですから」(第102話)と、ひなたに英語で話したが、本当だろうか。
結論からするとアニーが初来日でないのは間違いない。ひなたに英語をどこでおぼえたのかを尋ね、それがラジオの英会話番組だと答えられると、思わず「まだ放送されているの?」と口走ってしまった。
「アン」という名前の通称として「アニー」が使われることはよくある。例えばヘレン・ケラーの恩師であるアン・サリヴァンの通称もアニー。安子(あんこ)がアニーと名乗っても不思議ではない。
おそらくアニーの正体は…
仮にアニーが安子だった場合、どうしてヒラカワなのか。それは、本名を隠したい安子が、平川唯一(さだまさし)さんの名前を使っているからではないか。安子は平川さんが講師の「英語会話(カムカム英語)」のファンだった上、同じ岡山県人。平川さんの名前を借りてもおかしくない。
安子が本名を隠して生きていたら、るい(深津絵里)が渡米したにもかかわらす、安子の手がかりを掴めなかったことが腑に落ちる(第101話)。では安子がアニーだとすると、どうして本名で暮らさないのだろう。
それは安子という存在が、るいと別離した第38話(1951年)の時点で、死んだからではないか。「るいは私の命」と言っていた安子は、その命を失った時点で消えてしまったのだ。
事実、第38話でるいと別れた後の安子は魂が抜けたように放心状態だった。哀れで観ていられないほどだった。その後、渡米。るいを失った日本とは縁を絶ったのだろう。
おそらくアニーは安子だ。
物語はどう決着に向かうのか。まず3月28日から4月1日(第103話から第107話)の予告映像でるいの叔母・雪衣(多岐川由美、若年期は岡田結実)は入院している。年齢的に深刻な状態ではないか。
となると、雪衣は過去の安子に対する罪を懺悔するに違いない。やはり安子を追い詰めたるいの祖父・雉真千吉(段田安則)と伯父・算太(濱田岳)も死を前にして慚愧の念を口にした。
雪衣は第97話(1994年)でるいに対し、算太が失踪した理由が自分にあったと告白した。だが、それと比較にならないほどの大罪は伏せたまま。勇(目黒祐樹、若年期は村上虹郎)を思うあまり、安子が雉真家に居づらくした件である。
第28話(1948年)の雪衣は鬼になった。幼いるいに対し、残酷極まりないことを言った。
「安子さんはあきらめたんじゃと思います。女手一つでるいちゃんを育てることを」
雪衣はこの件をるいに謝らないと、死んでも死にきれないはず。悪党でもない限り、人は罪の意識を抱えたままでは逝けない。そこまで強くない。みんな真人間になって死んでいく。
雪衣が告白することにより、るい自身が言った「I hate you(嫌い)」以外、安子を絶望させた理由が揃う。るいの誤解は完全に解け、安子と対面する下地が整う。
ひなたはどうなるのか。ひなたは18歳の時、大部屋役者の虚無蔵(松重豊)から時代劇を救う存在になれると見込まれ、条映入りした。
第102話の時点でひなた36歳。外国人観光客のガイドやハリウッド映画制作陣のサポートが出来るようになった現状に虚無蔵は満足している。だが、時代劇にとってより大きな存在となり、根本から救うのではないか。
なにしろアニーは「驚きの女神」(第101話ナレーション)なのである。アニー本人も英語がひなたを思いもよらない場所へ連れていってくれると言っている。
ひなたはアニーと同じキャスティング・ディレクターになり、大部屋役者たちにチャンスを与える存在になるのか。いや、ひょっとすると、自分が出演する側になり、時代劇人気を高めるのかも知れない。
突飛な話ではない。そもそも子供のころからサムライになるのが夢なのだ。アニーの立場もキャスティング・ディレクター。ひなたを評価すれば推せる。すると、文字通り「驚きの女神」になる。
ひなたはもう若くはないが、それは関係ない。父・大月錠一郞(オダギリジョー)もピアノを始めたのだから。いずれにせよ、現在のヒロイン・ひなたの立場が大きく変わるのは間違いない。
間もなく登場するビリー(城田優、幼少期は幸本澄樹)の立場と役割も気になる。どうしてビリーがナレーターだったのか――。
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