巨人が圧倒的有利に…セ・リーグ「DH制導入」に現役、OB、スカウトの賛否は?

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「移行期間の設定」は必要になりそう

 ただし、懸念すべき点がある。

 ナ・リーグは今年からいきなりDH制が導入されたが、セ・リーグで導入する場合、チームを編成する側から「時間的な猶予が必要ではないか」という声が聞かれた。

「仮にセ・リーグで導入することになっても、オフに決めて、いきなり来年から……というのはどうかと思いますね。日本は、米国に比べてトレードやFA移籍が活発ではないですから、短期間でチーム編成を変えることは難しい。巨人のように“余剰戦力”があれば話は別ですが、他の球団は、こうした余裕はなく、チーム編成の観点からDH制に反対したと思います。本格的に導入するならば、ある程度の移行期間を設けて、各球団がDHの候補となる選手を、トレードやドラフトで獲得できるようにすべきでしょうね」(プロ球団のあるスカウト)

 確かに、準備期間を作らず、DH制度を導入すれば、“余剰戦力”を抱える巨人が圧倒的に有利になることから、他球団が賛同しないのは明らかだ。これを解消するためにも、前出のスカウトが指摘するように、「移行期間の設定」は必要になりそうだ。

「育成世代」は懸念

 最後に、プロ選手を輩出する側、アマチュア野球の関係者にも意見を求めた。

 プロ入りを目指す選手にとって、セ・パ両リーグでDH制が固定されれば、守備や走塁はそれほど目立たなくても、打撃に力のある選手のチャンスが増えることを期待する声がある一方で、プロに追随する形で、高校生など「育成年代」もDH制にすることに対しては懸念する意見が目立った。

「大学野球では、ほとんどのリーグがDH制を導入しており、打撃で勝負したい選手のプロへの可能性が広がることは良いことだと思います。ただ、あまり早く年齢から全てDH制にしてしまうのは反対です。特に小・中学生の年代は、まだまだ投手、野手どちらで伸びるか分かりませんし、早くからどちらかに特化してしまうと、選手の可能性を閉ざしてしまうことにもなりかねない。もし、セ・リーグがDH制を導入したとしても、アマチュア球界は全て追随するのではなく、高校生以下への導入は、慎重に考えてもらいたいです」(学童野球指導者)

 今後、セ・リーグ6球団、そして日本球界全体がDH制に対して、どのような動きを見せていくか、引き続き注目していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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