中村格・警察庁長官の忖度で「反社会的勢力」の名称も使えず 「警視庁組織犯罪対策部」の組織改編に身内から大ブーイング

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幻の「反社会的勢力対策課」

 いかにも“現場”を知らない上層部のやりそうな帳尻合わせというわけだ。かつて刑事といえば、警察組織の中でも花形とされてきたが、

「最近の若い子はつらい仕事をとにかく嫌うし、出世も早い警務などの内勤職を選ぶ傾向が強い。署の刑事課では、日々、万引きや特殊詐欺といった業務に追われて手一杯です。刑事の過労という問題に蓋をして、埋め合わせをするために組対部の人員整理を行う。それで本当に多様化する組織犯罪に対応できる組織になるのでしょうか。まさに“働き方改革”を優先してポイントを稼ぎたい上層部の浅知恵です」(先の某署のベテラン刑事)

 実は今回の警視庁組織犯罪対策部の改編では、ネーミングを巡っても「上層部」の意向が色濃く反映されている。昨年4月に編集部が入手した資料によれば、当初、組対4課は「反社会的勢力対策課」の名称が検討されていた。ところが、このネーミングは警察庁の圧力で取りやめになった経緯があるのだ。背景にあるのは、例の「桜を見る会」の騒動である。

「桜を見る会」を巡っては、全国の高齢者らから2000億円超を違法に集め、詐欺罪で立件されたジャパンライフの元会長が招待状を宣伝に使っていたことや、前夜祭の収支が政治資金収支報告書に記載されていなかったとして、安倍晋三元首相の元公設第一秘書が略式起訴されたりするなど、第2次安倍政権末期の火種となった。さらに、この騒動の渦中の2019年11月には、「桜を見る会」に反社会的勢力に関係する人物が出席していたとの疑惑も報道された。

明らかに当時の官邸への忖度

 これを受け、当時官房長官だった菅義偉前首相は記者会見で、「反社会的勢力の定義は一義的に定まっていない」と苦し紛れの釈明を行った。さらに政府はこの発言を追認するように、反社会的勢力を「あらかじめ限定的、統一的に定義するのは困難」との見解を閣議決定した。

 その影響で、今回の組織改編でも、「反社会的勢力対策課」の名称使用は取りやめになり、組対4課は4月から「暴力団対策課」と改称される。

「反社」の定義を巡る一連の騒動について、ある警察幹部は、
「『反社会的勢力』という表現を避けたのは明らかに当時の官邸への忖度。結局、警察庁の中村格長官が菅前首相の苦し紛れの釈明に配慮し、『暴力団対策課』という名称に落ち着いたと言われている」

 菅前首相の官房長官時代に秘書官を務め、その後、警視庁の刑事部長、警察庁の組織犯罪対策部長を歴任し、警察庁のトップとなった中村氏。警視庁刑事部長だった2015年6月には、安倍元首相と懇意だった元TBSワシントン支局長による伊藤詩織さんへの準強姦容疑の逮捕状を握りつぶした疑惑を「週刊新潮」に報じられた人物でもある。

 先のベテラン刑事も、
「組対部の人減らしも、警察組織での働き方改革をアピールしたい中村さんの意図ではないかともっぱらの噂。“組織改編”と言われてもみんなシラケきっていますよ」と言う。

 こんなことで現場の士気が下がってしまい、「反社会的勢力」に隙を突かれないように願うばかりだ。

デイリー新潮編集部

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