中村格・警察庁長官の忖度で「反社会的勢力」の名称も使えず 「警視庁組織犯罪対策部」の組織改編に身内から大ブーイング

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「体の良い人減らし」

 また、暴力団の中でもいち早く当局の動きに対応したのはいわゆる「経済ヤクザ」。彼らは、一般人に株や仮想通貨などで資金を運用させ、半ば合法的に多額の利ざやを得ていると言われる。

 今回の警視庁本部の組織改編では、これまで組対総務課内に設置していた「マネーロンダリング対策室」を、「犯罪収益対策課」に格上げ。全国の都道府県警で初めて、犯罪収益を外国口座や仮想通貨などに移すマネーロンダリング(資金洗浄)対策に特化した部署を設置している。ここまでのところ、組織犯罪の潜在化や多様化の流れを見れば理にかなった改編に見えるが、なぜ現場からは不満の声が漏れるのか。

「要は体の良い人減らしなんですよ。本部に合わせて、一部の警察署でも4月から組織改編が行われるのですが、署の新たな体制を見れば、お偉いさん方の本当の意図が分かります」
 と、前述の中堅幹部が解説する。
 
 これまで、同庁管内の中規模以上の13カ所の警察署には、殺人や窃盗、詐欺事件などを担当する刑事課と暴力団などを取り締まる組織犯罪対策課がそれぞれ分かれて設置されていた。それが、4月からは浅草、赤坂、四谷などの5署で刑事課と組織犯罪対策課が統合され、組織犯罪対策課が独立して残るのは新宿や渋谷、池袋などの8署だけになるのだという。

“働き方改革”の美名のもと

「署の組対課がなくなれば、当然、暴力団や半グレ、不良外国人の取り締まりや情報収集の能力は落ちる。ただ、今の警察組織にとってはそれよりも『働き方改革』が重要視されているんです」(別の警視庁幹部)

 24時間体制で治安を守る各地の警察署では、毎晩、各課から集まった署員らが班を組んで宿直体制を敷く。警視庁管内の警察署ではこれまで6日に1回宿直に入る6部制が通常だったが、近年は働き方改革を求める本部の要請で、8日に1回の8部制が導入されているのだという。署員全体の人数は変わらないのだから、当然、1日当たりの宿直の人数は減ることになる。

 某署のベテラン刑事はこの“人減らし”について、こう嘆いて見せる。

「宿直で変死体や窃盗、暴行などの事件を取り扱うのは主に刑事なんです。例えば、普段は事故専門の交通課の人たちに、変死体の案件は任せられませんからね。当然、宿直の回数を減らして1班の人員を減らしても、変死体や暴行、窃盗の案件が減るわけではなく、刑事の負担はますます増える。そうすると、結局、刑事は宿直明けも残務処理のために働かざるを得なくなってしまう。結局、刑事課の人間を増員しないかぎりは、“働き方改革”なんて不可能。つまり、今回の組織犯罪対策部の改変の本当の目的は、組対部をスリム化して余った人員を署の刑事課に回し、“働き方改革”の美名のもとで行われた宿直改革の“不都合”を覆い隠すことに他ならないのです」

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