中村格・警察庁長官の忖度で「反社会的勢力」の名称も使えず 「警視庁組織犯罪対策部」の組織改編に身内から大ブーイング
体の良い人減らし
一般市民へのみかじめ料(用心棒代)の要求や対立する組織同士の抗争事件など、暴力団の活動を取り締まる根拠となっていた暴力団対策法が3月1日で、施行から30年を迎えた。暴力団対策の節目を迎えるこのタイミングで、首都・東京の治安を守る警視庁では、暴力団などによる組織犯罪の取り締まりを専門とする「組織犯罪対策部」の組織改編が実施されることになった。ただ、この組織改編、現場からは「体の良い人減らし」とすこぶる評判が悪いようだ。
【写真】かつて准強姦事件の逮捕状を握りつぶしたこともある中村格・警察庁長官
この間、同法の度重なる改正で、警察当局の取り締まりは厳しさを増し、施行以来、暴力団の構成員の数は3分の1以下に減少している。
「現場を知らない警察庁のお偉いさんが机上の空論で考えたとしか思えませんよ」
そう憤るのは、警視庁の中堅幹部だ。この幹部によれば、4月からの組織犯罪対策部の組織改編は、桜田門に本部を構える警視庁のみならず、100を超える都内各地の警察署にも及ぶのだという。
「外国人不良グループによる組織犯罪の増加などを受け、警視庁が組織犯罪対策部を設立したのは2003年のことです。現在、警視庁本部の組対部は1~5課に加え、総務課と特別捜査隊の計7部門で構成されています」(同幹部)
暴力団と反グレが手を組みながら
組織改編では、これまで暴力団事件の取り締まりを担当していた組対4課が、実態把握を担当する組対3課と統合して「暴力団対策課」となる。また、外国人の不法残留や殺人などの強行事件を担当していた組対1課と組対2課も統合して「国際犯罪対策課」、芸能人の薬物事件などの捜査で知られる組対5課は「薬物銃器対策課」に改称するのだという。
警察庁によると、警視庁が組織犯罪対策部を立ち上げた1993年には、全国の暴力団の構成員は8万6700人を数えたが、2005年以降は減少に転じ、20年末時点でその数は2万5900人まで減少している。
組織トップに死刑判決が出た福岡県の工藤会や、三つ巴の抗争が続く山口組の例をみても明らかなように、抗争事件や市民への不当要求を警察当局が暴対法を駆使して厳しく取り締まった結果と言えよう。
一方で、警察当局の厳しい取り締まりを逃れるかのように、組織犯罪の種類も多様化している。飲食店などに用心棒代を要求する「みかじめ料」や覚醒剤の売買に加え、高齢者らから多額の現金をだまし取る特殊詐欺や、消費税分の利ざやを稼ぐ金塊の密輸、金融機関へのサイバー攻撃による現金の一斉引き出し……。時には暴力団と反グレが手を組むといったケースも見られるようになり、反社会的勢力の収入源は細分化してきていると言えそうだ。
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