モスバーガー50周年で「成増」が「なりもす」に “ネーミングライツ駅”の効果は

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「松原団地」駅が「獨協大学前」駅に変わった事情

 東武鉄道は、2017年に伊勢崎線の松原団地駅を獨協大学前駅へと改称した。こちらは副駅名ではなく正式駅名となっている。

 先述したが、三越前駅が正式駅名なのに対して京橋駅の明治屋前や上野広小路駅の松坂屋前などの副駅名。副駅名より正式駅名の方が地図や案内板に記載されることが多く、近隣のコンビニやファミレスといったチェーン店にも〇〇駅前店といった具合に使われる。これは広告・宣伝効果が段違いに高く、地域住民や利用者でなくても覚えてもらいやすい。

 それだけに、企業をはじめとするスポンサーからは副駅名ではなく正式名にしてほしいという打診もありそうだが…。

「獨協大学前駅は正式な名称ですが、これは地元の草加市や商工会議所も加盟する協議会からの要望に応える形で駅名を改称しました。改称にかかる費用は、全額負担していただいています。獨協大学前駅のように正式駅名になったケースもありますが、ほかの駅で『副駅名ではなく、正式駅名にしたい』という要望は現時点で寄せられていません」(同)

 駅名が稼ぐ手段になる一方で、ネーミングライツには少なからず負の部分もある。それは企業の意向に左右されることだ。企業の都合で駅名が変われば、利用者や地域住民に不便をもたらす。

 そうした事情から正式な駅名をネーミングライツで販売することは大きなリスクを伴う。副駅名称なら、そうした心配は少ない。副駅名称の導入は混乱を避けつつ駅名を販売するという狙いがあった。

 東武鉄道の担当者も「鉄道の駅は公共性が高いので、頻繁に駅名を変えることは避けたい」(同)と、頻繁に駅名を変えることへの懸念を口にする。長く付き合っていきたいという思いは、他方で長期的なネーミングライツにより、安定的な収入の確保という意味も含まれている。

 しかし、いくら鉄道事業者が契約を継続したいと考えても企業側が了承しなければ話は成り立たない。企業の業績は落ち込むこともある。

 2020年からのコロナ禍による不振が好例だが、合併・再編で企業名や商品名が変わることもある。そうした事態でも、駅名を変えれば地域住民や利用者とのハレーションが起きる。ネーミングライツには、そうした一長一短もある。

 ネーミングライツの導入は、多くの鉄道事業者にとって未知数。手探りで取り組んでいる状態にある。それだけに、今後に注目が集まる。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮編集部

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