モスバーガー50周年で「成増」が「なりもす」に “ネーミングライツ駅”の効果は

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「百貨店」前駅

 こうしたネーミングライツは決して新しい取り組みではなく、以前から存在していた。例えば、東京メトロ銀座線の三越前駅は1932年に開設されたが、これは三越百貨店が駅開設を要請し、その費用を負担した。そのため、三越前という駅名がつけられることになった。

 三越前駅が先例となり、銀座線は京橋駅に明治屋前、上野広小路駅に松坂屋前といった副駅名称を設定。三越前駅は正式名称で明治屋と松坂屋は副駅名称という違いはあるものの、どちらもスポンサーになることで命名権を取得している。これも広義の意味でネーミングライツといえる。

 昨今、鉄道事業者の多くはコロナ禍で減収減益に苦しむ。多岐にわたる収入源の確保に知恵を絞るが、ネーミングライツによる収入も有力な選択肢のひとつだ。

 先述したように、ネーミングライツはコロナ禍に直面してから鉄道事業者が本腰を入れるようになったわけではない。団塊の世代が定年退職し、少子高齢化によって鉄道需要が減退する危機は以前から叫ばれていた。そうした次世代を見据え、鉄道事業者は2015年前後からネーミングライツの可能性を模索していた。

 例えば、京浜急行電鉄は2013年に副駅名の導入を発表。これは副駅名称を販売することが狙いにある。ネーミングライツは、契約期間が終了すれば駅名を元に戻す。また、新しいスポンサー企業が名乗りを上げれば名称に変えなければならない。

 京急は2013年のネーミングライツ導入時に、全72駅のうち公共性の高い羽田空港国際線ターミナル駅と羽田空港国内線ターミナル駅の2駅は見送った。しかし、京急にとって顔とも言える品川駅・京急川崎駅・横浜駅・上大岡駅の4駅にはネーミングライツを導入できるようになった。

 品川駅・京急川崎駅・横浜駅・上大岡駅の4駅は乗降客数が多く、京急は特Aランクに位置付けている。特A駅の副駅名称の契約料は月60万円。原則的に1年以上の契約となるため、年間で720万円の売上となる。

 京急のネーミングライツ導入に触発されるように、東武鉄道も2016年から副駅名称の販売を開始している。

「現在、群馬県の太田駅に株式会社スバル前という副駅名称がつけられています。このほかにも、ネーミングライツによって副駅名称をつけている駅があります。これらは年間契約によってスポンサー料を負担していただいています」(同)

 副駅名称なら、頻繁に変更しても正式駅名が変わるよりも影響が少ない。だから副駅名称は売り出しやすい。

 他方、東武鉄道では2020年に新たにみなみ寄居駅が開業している。同駅には副駅名称にホンダ寄居前とついている。同じ副駅名称ではあるが、みなみ寄居駅は、事情が異なるようだ。

「同駅には隣接して本田技研工業の工場があり、それらの工場への通勤の便を図るために開設されました。ホンダが開設の諸費用を負担したので、特に副駅名称にかかる年間使用料はいただいておりません」(同)

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