ウクライナ危機で「2兆円分の電気代値上げ」の可能性も 焦点は「サハリン2」からの撤退

国際

  • ブックマーク

「戦争の資金支援はしない」

 バイデン大統領が3月8日の緊急演説で力説した通り、米国がロシアに対する経済制裁を加速させている。金融制裁だけではなく、ついに原油や天然ガスなどエネルギー資源全般についても、禁輸措置に踏み切ったのだ。

 ***

 英国も追随する動きを見せており、企業もこの流れに同調。米石油大手のエクソンモービルが、原油ガス開発事業の「サハリン1」からの撤退を発表し、英石油大手のシェルも「サハリン2」から手を引くと公表した。

 この話は日本にも無関係ではあり得ない。特に、「サハリン2」には三井物産が12.5%、三菱商事が10%の出資をしているからだ。

 そこで両社に聞くと、

「現時点において撤退を決定した事業はありません」(三井物産)

「関係先と協議の上、慎重に判断していきたい」(三菱商事)

 と、当面は静観の構えらしい。一方で、

「NATOが直接武力行使すれば、第3次世界大戦の幕が開く。西側諸国に残された手段は事実上、経済制裁だけ」(外信部記者)

天然ガス輸入量の10%弱にあたる

 だとすれば、米英と軌を一にしなくていいのかという疑問も浮かぶ。だが、

「日本がサハリン1から輸入している原油は全体輸入量の1%ほどですから、その分は中東から賄えます。問題は、サハリン2から輸入しているLNG(液化天然ガス)ですよ」

 とは、さる大手商社の関係者。

「サハリン2のLNG生産量は年産で約1千万トン。その内、600万トンが日本に向けて輸出されていて、日本全体の輸入量の10%弱に当たります」(同)

 サハリン産が重宝されているのにはワケがある。

「2日もあれば、日本まで輸送できるからです。例えば中東からだと、2週間以上かかってしまいます」(同)

 サハリン以外から輸入すると、物流コストが余計にかさむというのだ。

次ページ:夏に計画停電の可能性も

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。