「怪物スラッガー」花巻東・佐々木麟太郎、なぜセンバツで“完全沈黙”したのか

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清宮の数字を大きく上回る可能性

 3月19日に開幕した選抜高校野球。出場32校が全て登場するまでの期間、目に付いた選手、プレーについて独自の視点から掘り下げて、現地からレポートしていきたい。今回、ピックアップするのは、23日に行われた第6日目、花巻東(岩手)対市立和歌山(和歌山)である。【西尾典文/野球ライター】

 今大会、ナンバーワンの注目選手といえば、花巻東の2年生、佐々木麟太郎になるだろう。入学直後からファーストのレギュラーを獲得すると、大会前に積み上げたホームラン数はチームの先輩である大谷翔平(エンゼルス)が3年間にマークした数字と並ぶ56本。歴代最多と言われる高校通算111本塁打を誇る清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)の1年秋時点の数字が22本だったことを考えると、佐々木の数字がいかに“規格外”と言えるかがよく分かる。順調にいけば、清宮の数字を大きく上回る可能性は高く、早くも来年の“ドラフトの目玉”という声も聞かれるほどだ。

 しかし、“令和の新怪物”が臨んだ初めての甲子園は、4打数ノーヒット、2三振で、チームも初戦敗退と悔しい結果に終わった。佐々木を完璧に抑え込んだのが、今秋のドラフト候補として注目されている、市立和歌山のエース、米田天翼だ。

 なぜ、佐々木のバットは完全に沈黙したのだろうか。最も大きなポイントとなったのが初回の第1打席だ。米田は先頭打者にいきなりストレートの四球を与えると、続く打者のバントも不運な内野安打となり、いきなりノーアウト一・二塁というピンチで佐々木を迎えた。

「強い気持ちで内角に」

 米田が明らかに狙ったところに、ボールを投げられていない様子を見て、佐々木の長打、ホームランを期待したファンも多かったはずだ。ただ、そこから米田はストレートを3球続けて追い込むと、その後、佐々木に粘られながらも、最後は高めのストレートで空振り三振を奪って見せた。

「(佐々木は)ホームランのあるバッターなので、近めの速いボールで詰まらせることを試合前から考えていました。立ち上がりは浮ついていたところもあってボールも高めに浮いていましたが、あの場面では強い気持ちで向かっていこうと思って内角に投げました。特に、3球目の内角に投げられたボールは手応えがありました。ああいう場面でギアを上げて、速いボールで押し込めたことは大きかったと思います」(米田)

 最後に空振りしたボールは高めに大きく浮いたボール球であり、決して狙ったところに投げられたボールではなかったが、それまでの厳しいコースに来ていたボールの残像が影響した部分もあったのではないだろうか。

「事前に映像を見て高めに浮いてくるボールも多いと思っていたので、甘く入ったところを逃さないようにという意識はありました。(第1打席の三振したボールは)狙っていた高めだったんですけど、予想以上の高いところに思わず手が出てしまいました。あそこで打っていればゲーム展開も変わっていたと思うので本当に不甲斐ないと思いますし、責任を痛感しています」(佐々木)

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