大暴言で姿を消したスター・ミケルソン オイルマネーによるゴルフ新ツアー構想が大モメ

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ピエロを演じたことは確か

 皮肉なことに、ミケルソン発言が公表された時期と前後して、新ツアーへの移籍が噂されていたダスティン・ジョンソンやブライソン・デシャンボーといったスター選手たちは、こぞって「PGAツアーこそが僕の居場所だ」とする声明を出し、かねてPGAツアーへの忠誠を誓っていたローリー・マキロイは「一体、誰が新ツアーへ行くんだ?(誰も行かないだろう)」と語気を強めた。

 そう、新ツアー移籍予定者リストから米ツアーの人気選手たちがいなくなり、ほぼゼロになった矢先、ミケルソン発言が公表され、問題視され、ミケルソンだけが公の場から姿を消すことになったのだ。

 その手順やタイミングが何者かによる恣意的なものだったのかどうかは、現状ではわからない。しかし、メジャー6勝を含むPGAツアー通算45勝を誇り、世界ゴルフ殿堂入りも果たしたレジェンドであるミケルソンが、ただ一人、ピエロを演じたことだけは確かだ。

 莫大な金に目がくらんだのか、それともサウジ勢力にアピールするための功を焦ったのか、あるいは、すでに高額の報酬を得て、すっかり有頂天になっていたのか。

 ともあれ、「覆水盆に返らず」。ミケルソン発言は世界へ向けて広がっていき、発言の拡散と入れ替わるように、世界で活躍してきたミケルソンは小さな殻の中に閉じこもる結末になった。

賞金総額は2億5500万ドル

 その後、PGAツアーのモナハン会長は、ミケルソンの今後は「彼の出方次第だ」と語り、モナハン会長側から彼に救いの手を差し延べる気は「ない」と言い切った。

 新ツアー側のノーマンCEOも、ミケルソンの発言を「残念だ」と言い捨てた。しかし、移籍予定者がほぼ皆無になっても、「これで終わりではない。これは始まりにすぎない」という挑戦的な文面をモナハン会長に送りつけ、3月に入ると、新ツアーの具体的な内容を公表した。

「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」と名付けられた新ツアーは、今年6月を皮切りに年間8試合が予定されている。個人戦とチーム戦の双方が48名、全12組で行われ、予選カットなしの3日間54ホールで競われる。賞金総額は2億5500万ドル。シーズン終了後には、さらなるボーナスも用意されるそうだ。

 初戦の舞台はロンドンのセンチュリオンGC。米国内でもパンプキンリッジなどの名門が開催コースになる……とされている。

 だが、いくら高額賞金と名コースを用意したところで、そこで戦う選手は果たして集まるのかどうか。そして、そこにミケルソンの姿はあるのかどうか。

「絵に描いた餅」になりそうな予感がする一方で、ノーマンの執念がその「餅」を熱く焼き上げ、大きく膨らませる気も、しないではない。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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