どうして勝てないのか…「鬼門球場」に棲む“魔物”に泣かされた3人の投手列伝

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「いやあ、長かった」

 ビジターならまだしも、よりによって本拠地が鬼門になったのが、楽天時代の美馬学だ。

 13年の日本シリーズ第7戦で巨人打線を6回無失点に抑え、球団創設以来初の日本一の立役者になった美馬だったが、この野球人生最高の日を最後に、本拠地・宮城で勝てなくなった。

 翌14年、美馬は本拠地開幕戦となった4月1日のオリックス戦で先発するも、5回途中4失点KO。同29日のロッテ戦では、打球を股間に受けて負傷降板するアクシデントにも見舞われ、本拠地では0勝5敗でシーズンを終えた。

 さらに15年も、4月8日のソフトバンク戦で9回を無失点で抑えながら、味方打線の援護なく、0対0で降板するなど、勝利の女神にそっぽを向かれ、7月24日のロッテ戦の黒星で、公式戦では13年4月18日のソフトバンク戦で勝ったのを最後に13連敗となった。

 そんな長い呪縛の日々から解き放たれたのが、16年5月4日のロッテ戦。美馬は初回にいきなりデスパイネにタイムリー二塁打を浴びるなど、毎回走者を出す苦しい投球ながら、6回を2失点と要所を締め、公式戦では前出のソフトバンク戦以来、1112日ぶりに本拠地・宮城で白星を挙げた。

「いやあ、長かった。すみません。お待たせしました」と地元ファンに挨拶した美馬は「ホームで勝つといいですね。次からは(ジンクスを)意識しないで投げられる」と長いトンネルを抜けた喜びを爆発させていた。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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