ロシアで「プーチン支持率70%超」報道の胡散臭さ 実際のところはどれくらいなのか?
急激に下落する支持率
中村教授は「注意が必要なのは、ネット調査による支持率10%という結果も、同じように信用はできないということです」と言う。
「ウクライナ侵攻で、いつも以上に言論の自由が制限されています。調査するほうも様々な手を尽くしているとは思いますが、どうしてもサンプルは都市部に住む若者に偏ってしまうでしょう。それを考慮した上で、経済制裁がロシア国民に与えたインパクトを見るには、興味深いデータだと言えるのではないでしょうか」
ちなみに都市部であれ農村部であれ、ロシアの若者層は「反プーチン」が増えているという。
「彼らは生まれた時からプーチン大統領だったわけです。若者層はスマートフォンなどを使い、欧米のメディアにも接しています。アメリカでもイギリスでもフランスでもドイツでも、国のトップは変わるし、政権交代は起きることを知っています。『それに比べて、自分たちの国は遅れているね』という意識は高いのです」(同・中村教授)
結局のところ、支持率70%とか10%という数字も信じられないが、正確なパーセンテージも分からない。
ひょっとすると50%かもしれないし、30%かもしれない。何しろ今のロシアでは、国民が正直に支持や不支持を回答し、それを正確に集計して発表する世論調査は存在しないからだ。
テレビで「戦争反対」
ただ、プーチン大統領の支持率がどんどん下降していることだけは間違いないという。
今後、プーチン政権の支持率がどれほど下がるのかを考える際、中村教授は「ロシア国営テレビの職員が放送中に反戦を訴えたことが世界中で注目されました。あの影響は大きい可能性があります」と言う。
3月14日、ロシアの国営放送「第1チャンネル」の午後9時から放送される看板ニュース番組「ブレーミャ」で、「戦争反対」と書かれた大きな紙を持った女性が画面に映った。
紙には《「戦争反対」という英語とともにロシア語で「戦争をやめて。プロパガンダを信じないで。あなたはだまされている」と書かれていました》という(註2)。
《ロシアのメディアによりますと、女性はこのテレビ局で編集担当者として働くマリーナ・オフシャンニコワさん》
オフシャンニコワさんには今のところ、日本円で約3万2000円の罰金を科す判決が下った。
だがこれは、“余罪”に適用されたものだということも判明している。SNSで反戦デモの参加を呼びかけたことに対する判決であり、テレビで反戦を訴えたことは審理に含まれていない。
もしロシア政府が本気でテレビでの罪状も追及するつもりなら、最大で禁錮15年の判決が下る可能性が取り沙汰されている。
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