ロシアで「プーチン支持率70%超」報道の胡散臭さ 実際のところはどれくらいなのか?
都市部と農村部
例えば、都市部では「反プーチン」、農村部では「親プーチン」の傾向があるという。この場合、性別や年齢の違いは関係ないようだ。
「プーチンの権力基盤は、自分の仲間に“特権”を与えることで強固なものになりました。大統領に就任すると、故郷の友人など、気の許せる腹心を新興財閥のリーダーに据え、彼らに資金や公有地を違法に供与することで巨額の利益を得られるシステムを作り上げたのです。恩義を感じた仲間がプーチンに忠誠を尽くしたことで、長期政権が可能になりました」(同・中村教授)
“コンプライアンス”を重んじる西側社会では、“禁じ手”と言っていい。もし日本の首相が国有地を無料で民間企業に譲渡したことが発覚したら、内閣は総辞職となり、逮捕者が出ても不思議ではない。
こうした癒着や腐敗をどう受け止めるか、都市部と農村部では差があるという。
「やはり農村で農作業に従事している人々は、なかなかプーチン政権の癒着や汚職に気づきにくいでしょう。都市部であれば、新興財閥に勤務している人もいます。自分たちのトップが、どれほど法的に問題がある行動をしているか、よく分かっている社員もいるわけです。こうして一般的に、都市部の住民のほうが『反プーチン』色は強いという傾向がありました」(同・中村教授)
ロシアの腐敗
話は少し脇道に逸れるが、プーチン政権はトップから腐敗しているのだから、ロシア中に腐敗が蔓延している。
「ロシアで腐敗している組織として、庶民に最も身近なのが警察です。ロシア人にとって警察とマフィアは似たようなものです。些細な交通事故でも難癖をつけ、賄賂を要求してきます。更にロシア軍の腐敗も深刻です。軍事費を横流しして蓄財したり、様々な密輸ビジネスに軍幹部が手を染めたりしています。軍事費が正しく使われなかったことが、ウクライナ侵攻で苦戦している原因だと指摘する専門家もいるほどです」(同・中村教授)
ただ、ロシア軍がウクライナに侵攻しても、「最初は世論の反応は鈍かった」と中村教授は分析している。
もちろん、支持率が60%から70%に上昇したという調査結果は信用できない。だが、60%から50%に下落したような気配もなかった。
後で詳しく説明するが、インターネットを利用し、「プーチン政権の支持率は10%」と発表した世論調査もあるという。これが参考になるようだ。
「インターネット調査の数字は、欧米が厳しい経済制裁を科し、日常品の値上がりが大問題になってから発表されたものです。実際に侵攻が始まった時期とは“タイムラグ”がありました。こうした動きを見ますと、ロシア人は当初、それほどウクライナ侵攻を問題視していなかった。それが経済制裁を身近に感じると、急速にプーチン大統領の支持率が下落した可能性が浮かび上がるのです」(同・中村教授)
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