プロ注目の投手対決…木更津総合・越井颯vs.山梨学院・榎谷礼央、スカウト陣の“気になる評価”は?

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テンポの良さが光る越井

 3月19日に開幕した選抜高校野球。出場32校が全て登場するまでの期間、目に付いた選手、プレーについて独自の視点から掘り下げて、現地からレポートしていきたい。今回、ピックアップするのは、21日に行われた第3日目、山梨学院(山梨)対木更津総合(千葉)である。【西尾典文/野球ライター】

 榎谷礼央(山梨学院)、越井颯一郎(木更津総合)のともに、プロが注目する好投手同士の対決となったこの一戦は、延長12回を終えて1対1の同点のまま、ノーアウト一・二塁からスタートするタイブレークに突入する。最後は、榎谷が押し出しの四球を与えて、木更津総合が2対1でサヨナラ勝ちをおさめた。

 両投手が持ち味を十分に発揮するハイレベルな投手戦だった。

 投げ勝った越井は、テンポの良さが光った。捕手からの返球を受けると、サインに首を振ることなく、すぐに振りかぶって投球モーションに入るため、筆者が取材ノートに目を落としている間に、次のボールが投じられているということが多々あった。

 素早くモーションに入っても、コントロールを乱すことなく、ストレートも変化球も変わらないフォームでストライクをとれるというのが非凡なところ。山梨学院のバッターは、なかなか自分のタイミングで打席に入ることができていなかった。

審判が試合の進行を早める傾向

 木更津総合の五島卓道監督は、試合後に「秋と比べてコントロールが良くなりましたね」と、越井を評価していたが、延長13回、166球を投げて、与四球はわずかに2個と、自ら崩れるような雰囲気は全くなかった。また、この日のストレートの最速は142キロと、自己最速(146キロ)に及ばなかったものの、緩急を巧みに使い、数字以上にボールを速く見せることができていた。

 甲子園では、越井のような、テンポが良い投手が活躍する“からくり”がある。

 1日に3試合、日によっては4試合を消化する必要があるため、審判が試合の進行を早める傾向が強いのだ。過去に甲子園に出場した監督や選手から「気がつけばあっという間に試合が終わっていた」という趣旨のコメントを聞いたことは一度や二度ではない。

 山梨学院のベンチからは、打者に対してテンポの早さに合わせないようにという指示が何度も送られているように見えた。しかしながら、露骨に打席を外すような行為を許さない“雰囲気”が、甲子園には確かにあった。山梨学院打線は、最後まで木更津総合バッテリーのペースを崩すことができなかった。

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