ウクライナ危機で暗躍する米「CIA」英「MI6」 機密工作の内容とは

国際

  • ブックマーク

モスクワ市民が蜂起する可能性も

 キエフへの総攻撃が始まり、女性や子どもが大虐殺されれば、これまで以上に厳しい制裁が科せられるのは間違いない。そこで予想されるシナリオとしては、

「生活が立ち行かなくなったモスクワ市民が一斉蜂起して、クレムリンになだれ込むことも考えられます。バスティーユ監獄襲撃から始まったフランス革命のように、現在収監中の反体制派指導者・ナワリヌイを解放すれば、ゼレンスキーのようなリーダーになるかもしれません」(同)

 一方、中村教授が最悪のシナリオとして挙げるのは、

「プーチンがウクライナではなく、バルト三国やポーランド、ブルガリア、ルーマニアなどに駐留する米軍やその基地を狙って核兵器を使用する展開です」

 看過できないのはプーチンが揺さぶりに用いる“核”の存在だ。チェルノブイリ原発もすでにロシア軍に制圧されている。国際政治学や核軍縮を専門とする、一橋大学大学院法学研究科の秋山信将教授が言う。

「チェルノブイリ原発では86年に事故を起こした4号機はもちろん、1~3号機も廃炉となっています。すべての核燃料をプールに沈めてから十数年が経過しているため、メルトダウン(炉心溶融)する可能性は低いと思われます」

 秋山教授が懸念するのは、むしろ、ロシア軍の砲撃を受け、まもなく接収されたザポロジエ原発の存在だ。

「ザポロジエ原発の6基の原子炉はいずれも冷却が必要です。電源供給が途絶えて1基でもメルトダウンを起こせば、他の原子炉にも保安要員がアクセスできなくなり、全基のメルトダウンも有り得る。チェルノブイリ事故以上の甚大な被害が予想されます」

「限定的な核使用」の可能性

 ウクライナは総発電量の5割を原発が占めるため、原発の制圧はロシアが電力コントロールを掌握することに等しい。すでに多くの都市で電気や水道が止まり、市民は氷点下の寒さに喘ぐ生活を余儀なくされている。

「国民生活への影響は甚大で戦意喪失にも繋がりえます。また、ロシアは原発やダムへの攻撃を禁じたジュネーブ諸条約・第1議定書を批准しているにもかかわらず、国際規範を破って原発を攻撃した。その行為は、プーチン大統領ならば核兵器の使用も躊躇しないのではないかとの疑念も生じさせます」(同)

 先の小泉氏が続ける。

「ロシアの核抑止には、小規模な実力行使が含まれています。紛争がロシアにとって不都合な展開になりそうになったら限定的に核兵器を使用する、と。ウクライナの無人の場所や海上に1発だけ撃ち込んで戦意をくじくわけです。当然ながら、リスクを考えれば踏みとどまると思いますが、今回に限ってはプーチンが正気かどうか、確信が持てません」

 世界の命運は、依然として追い詰められた“皇帝”の手に握られている。

週刊新潮 2022年3月24日号掲載

特集「プーチンの断末魔」より

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。