ウクライナ危機で暗躍する米「CIA」英「MI6」 機密工作の内容とは

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情報獲得手段はハッキング

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も、アメリカがロシアの中枢しか知り得ない軍事作戦の詳細を正確に把握していたことに驚かされたと語る。

「おそらくロシア軍やクレムリンの内部情報を入手している可能性が高い。ジェームズ・ボンドのようなスパイが活躍する時代ではないため、情報獲得の手段は多くがハッキングです。CIAやMI6はターゲットの情報を現地で収集して糸口を見出し、その人物が引っ掛かりそうなメッセージを送ってフィッシングする。それ以外に偵察衛星や通信傍受、早期警戒機で集めた軍事情報もウクライナに流しているはずです」

 プーチン暗殺に向けた機密工作も進んでいるのか。

「アメリカがロシアと直接戦争しているわけではないので、実際にCIAが暗殺を企てているとは思えませんが、プーチンの居場所を必死に探っているのは事実でしょう。ただ、プーチンは大統領就任直後から暗殺を恐れており、その動向は常に謎に包まれています」(同)

ソ連と同じ運命

 元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授は次のように述べる。

「キエフを陥落させて親ロ派の傀儡政権を樹立しても、4千万人の国民を従え、養うことができるかは疑問です。ゲリラ戦が続くことも考えられ、正規軍だけでは到底、対処できません。約40万人の国家親衛隊を投入するつもりでしょうが、プーチン自身も統治についての展望を持ち合わせていないように思います」

 一方、ロシア国内に目を転じると、国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除されてロシア国債はデフォルトの危機。経済破綻が目前に迫っている。ロシア政治が専門の中村逸郎・筑波大学教授が指摘するには、

「プーチンにすれば、西側諸国の経済制裁が思いのほか厳しく、内心では気が狂わんばかりの状態ではないでしょうか。ソ連は1979年にアフガンへと侵攻しますが、戦争の長期化によって経済が疲弊。当時の指導者はその事実を隠蔽し続けたものの、91年にソ連は崩壊を迎えた。いまのロシアはソ連と同じ運命をたどりつつあるように見えます」

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