ウクライナ危機で暗躍する米「CIA」英「MI6」 機密工作の内容とは

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追い詰められるプーチン

 ロシアの安全保障に詳しい、東大先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師はこう分析する。

「現在の戦況は膠着状態にあります。ロシア軍が圧倒的に優勢ではなく、ウクライナ軍が相当持ちこたえている。やはり開戦前のロシアが、根本的な想定を見誤ったのだと思います。ウクライナ軍は装備や練度の面でロシア軍に劣り、ゼレンスキー政権の支持率は20%程度。バラバラの民族が寄り集まった弱小国家に過ぎないので、ロシア軍が侵攻すればすぐに崩壊するだろう、と。プーチンはそう考えていたはずです」

 短期決戦を前提に、北部、東部、南部の3方向から一気に攻め込んだものの、

「全土に満遍なく攻撃を仕掛けて、満遍なく停滞しているわけです。15万人の地上兵力を投入しながら兵站(へいたん)や補給に苦しみ、ゲリラ攻撃に悩まされる。軍の運用は極めて杜撰(ずさん)に思えます。ロシア軍がキエフとハリコフを落とすことは考えられますが、そこが攻勢限界で、さらなる軍事作戦を展開することは難しい。加えて、東側からキエフに迫るロシア軍の切り札“第1親衛戦車軍”の進撃が頓挫すれば、プーチンは完全に手詰まりになってしまう」

 つまり、キエフ陥落を目前にしながら、実は、攻勢をかける冷酷非道な“皇帝”プーチンこそが追い詰められているというのだ。

粛清の原因

 そんなウクライナの善戦を陰で支え、プーチンを苛立たせているのが米・CIAや英・MI6などの諜報機関だ。国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、

「CIAなどはかなり以前からロシアの動向を把握しており、昨年12月にはワシントン・ポスト紙が情報機関の報告書の内容として、ロシアが17万5千人を動員したウクライナ侵攻を計画中と報じています。その頃から、CIAやNSA(米国家安全保障局)と緊密な関係にあるサイバー軍をウクライナに派遣し、準備を進めていたとの情報もあり、実際にロシアは今回、サイバー戦でほとんど戦果を上げられていません。さらに、今年2月3日には、ロシアが侵攻を正当化する目的で“偽旗作戦”を行う恐れがあると国防総省の報道官が発言。“嘆き悲しむ弔問客の俳優も用意している”と明かしました」

 今月12日、ロシアの独立系メディアは、KGBの後継機関、FSB(連邦保安局)の対外諜報部門トップが、プーチンによって自宅軟禁させられていると報じた。

「チェチェン人の特殊部隊がゼレンスキー暗殺を試みたものの、FSB関係者からの情報漏洩によって失敗した。それが“粛清”の原因とも考えられます」(同)

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