「引退間近」や「世界にたった一つ」も いまだから乗っておきたい列車をレコメンド…四国「DMV」、JR九州特急「かもめ」、JR西日本特急「やくも」

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42年前につくられた車両が現役の理由

「やくも」に42年前につくられた車両がいまだに現役で使用されている理由の一つは、381系が振子式車両という特殊な構造を備え、後継の車両の開発が遅れたからだ。381系はカーブを通過する際、車体に働く強い遠心力を活用して車体をカーブの内側に傾けてしまう。

 もともとカーブを通過するに当たって速度面では余裕があっても乗り心地では難があったところ、381系では車内で感じられる遠心力は軽減されるので、カーブでのスピードアップが実現した。具体的には通常の車両の制限速度よりも時速にして20km分早く通っていける。

 山陽線の倉敷駅と山陰線の伯耆大山(ほうきだいせん)駅との間の138.4kmを結ぶ伯備線は、中国山地を横断することからとにかくカーブが多い。国鉄時代の資料では、岡山県高梁(たかはし)市の方谷(ほうこく)駅と鳥取県伯耆町の伯耆溝口駅との間の79.9kmだけで110カ所ものカーブが存在するとあった。

 カーブの距離が1カ所につき数百メートルと仮定すると直線はほとんど存在しないこととなり、振子式車両でなければ特急らしいスピードを出して走っていけないとさえ言える。

 客室を中心にリニューアルを施しながら381系は「やくも」に用いられてきたが、いよいよ引退の時期が近づいた。JR西日本によると2024(令和6)年度以降、新たに273系電車が投入され、381系を置き換えるという。

 退役間近な381系のはなむけか、JR西日本は6両編成1本だけ車体の色をクリーム色の地に窓回りが赤と国鉄時代のものに戻し、3月19日から走り出している。どうせならばこの色の車両に乗りたいことであろう。出雲市駅方面は「やくも9・25号」、岡山駅方面は「同8・24号」で最後の活躍を続けるそうだ。

梅原淳
1965(昭和40)年生まれ。三井銀行(現在の三井住友銀行)、月刊「鉄道ファン」編集部などを経て、2000(平成12)年に鉄道ジャーナリストとしての活動を開始する。著書に『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)ほか多数。新聞、テレビ、ラジオなどで鉄道に関する解説、コメントも行い、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談室」では鉄道部門の回答者を務める。

デイリー新潮編集部

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