「引退間近」や「世界にたった一つ」も いまだから乗っておきたい列車をレコメンド…四国「DMV」、JR九州特急「かもめ」、JR西日本特急「やくも」
素晴らしい車窓からの眺め
「リレーかもめ」は現行の「かもめ」の博多駅と肥前山口駅との間をなぞるように走るので、愛称名や列車の本数などを除けば9月23日以降もほぼ変わりはない。けれども、長崎線の肥前山口駅から長崎駅までの間は在来線の特急列車は姿を消す。
正確には9月23日以降は肥前山口駅と佐賀県鹿島市の肥前鹿島駅との間の15.0kmには上下合わせて14本程度の特急列車が運行されるというので、特急がなくなるのは肥前鹿島駅と長崎駅との間の70.7kmとなる。
肥前鹿島駅と諫早駅との間の45.8kmの車窓からの眺めは素晴らしい。線路は有明海の海岸に沿って敷かれており、遠浅の海はもちろん、有明海越しに雲仙岳の姿も望める。西九州新幹線は山あいを通るのでトンネルの比率も66km中約41kmと半分以上で、車窓の魅力という意味では在来線の特急「かもめ」にはかなわない。
西九州新幹線開業後にはこの区間は普通列車だけが走ることとなり、しかも運転区間も細切れになると予想されるので、乗り通すのであればいまのうちだ。
JR西日本特急「やくも」の希少性
「やくも」は、岡山駅と島根県出雲市の出雲市駅との間を山陽線、伯備(はくび)線、山陰線を経由して結ぶ特急列車で、平日に毎日運転される本数は出雲市駅方面、岡山駅方面とも12本ずつの計24本である。
日本地図を見ると先述の「かもめ」のほうが距離が長いように思われるが、実は岡山-出雲市間は220.7kmと66.8kmも長い。この区間の所要時間も3時間05分前後と結構な長旅だ。
「やくも」の特徴は車両に見られる。国鉄時代に製造された381系という電車が用いられているのだ。国鉄の分割民営化から2022年で35年が経過した。
いまや全国のJRの特急列車で国鉄時代につくられた車両がほぼ原型に近い状態で使用されているのは「やくも」、そしてJR北海道のキハ183系というディーゼルカーによって札幌駅と網走駅とを結ぶ「オホーツク」、同じく旭川駅と網走駅とを結ぶ「大雪」、JR四国のキハ185系というディーゼルカーによって高松駅と徳島駅との間を結ぶ「うずしお」、同じく徳島駅と阿波池田駅との間を結ぶ「剣山」、同じく徳島駅と牟岐駅との間を結ぶ「むろと」くらいである。
ほかにもキハ185系を使用した特急列車はJR四国の「四国まんなか千年ものがたり」(多度津-大歩危間)やJR九州の「ゆふ」(博多-別府・大分間)などいくつか運転されているが、観光に特化したこともあり、国鉄時代の姿と比べて結構手を加えられているので筆者の判断で省かせていただいた。
なお、同じ国鉄時代の車両が用いられると言っても「やくも」と「やくも」以外とでは相違点が見られる。「やくも」用の381系は全車両が国鉄時代の製造だが、キハ183系やキハ185系にはJRが発足してからつくられた車両も混じっている。
「やくも」用の車両は1981(昭和56)年から翌1982(昭和57)年にかけて製造されたので今年で41年または42年となるのに対し、キハ183系やキハ185系で国鉄時代に製造された分は1986(昭和61)年製とやや新しい。
[3/4ページ]