創部12年で甲子園初勝利!“公立の星”和歌山東が見せた「驚愕のスクランブル継投」

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上手く相手打線の目先を変えられたから

 そして、このような起用法に今後、和歌山東のような公立高校が勝ち進むためのヒントが隠されているといえる。

 和歌山東の部員数は31人と、今大会に出場している私立の強豪校と比べてもかなり少ない。今年のチームは、冒頭で触れた津森のような力のある選手は不在であり、この日登板した3人の投手も、ストレートの球速は大半が120キロ台で(麻田が130キロを1球マーク)、決してスピードがあるわけではない。それでも近畿大会を勝ち抜き、甲子園でも1勝をあげられたのは、上手く相手打線の目先を変えられたからに他ならない。

 また、麻田が多くのポジションを守り、ライトでレギュラーの山田が投手も務めるなど異なるポジションを守りながら投手ができる選手を複数抱えているからこそ、こういった継投が可能になっているともいえる。

 創部わずか12年で、甲子園で見事に勝利を勝ち取ったという“事実”は、全国の同じ公立高校にも大きな希望を与えたことは間違いないだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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