今年は「延長12回制」が復活! 阪神、ヤクルトは不利に…有利になる球団はどこだ?

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スアレスの抜けた穴は大きい

 一方、セ・リーグで不利になりそうなチームが、昨年優勝を争ったヤクルトと阪神である。まず、ヤクルトは昨年規定投球回に到達した投手が「0」というのが大きな気がかりだ。奥川恭伸の成長ぶりには目覚ましいものがあるが、先発投手陣の層はやはり薄い印象は否めない。

 リリーフ陣も昨年はリーグダントツトップの149ホールドをマークしているものの、清水昇、マクガフ、今野龍太、石山泰稚などがフル回転したことによる反動が出てくることも考えられる。一昨年のドラフト1位である木沢尚文など、新たな戦力の台頭がなければ、延長で勝ちを落とすケースも増えてくるだろう。

 阪神は何と言っても守護神のスアレスの抜けた穴が大きい。新外国人のケラーに代役として期待がかかるが、実力は未知数で、セットアッパーの岩崎優が昨年、ホールドが大幅に増えたとはいえ、防御率を落としている点も気がかりだ。先発のコマが揃っているのはヤクルトと比べて強みだが、ケラーが機能しないようであれば、投手陣全体の再編を考える必要が出てくるだろう。

投手陣の層が厚いソフトバンク

 パ・リーグで有利になりそうな球団は、やはり投手陣の層が厚いソフトバンクだ。昨年は抑えの森唯斗が故障で長期離脱したほか、セットアッパーのモイネロは、東京五輪予選や家族の都合で33試合の登板にとどまった。だが、それでも、チームの救援防御率はリーグ2位の3.07をマークしている。

 今年はさらにFAで又吉が加入し、故障からの復活を目指す甲斐野央も順調な調整を続けている。先発ローテーション候補も多く、そこから漏れた投手でブルペンを補充できることも強みだ。昨年は12球団で最多となる21の引き分けがあったが、今年は延長で勝ちを拾い、勝率を上げられる可能性は高い。

隅田知一郎は楽しみだが……

 逆にパ・リーグで苦しくなりそうなのが西武である。昨年はチーム防御率、救援防御率ともにリーグ最下位で、昨年61試合に登板したギャレットが退団している。

 中継ぎ、抑えとしてフル回転した平良海馬は、オフに右足首の手術を受けた影響で出遅れており、開幕に間に合うかは微妙な状況だ。先発投手陣は若手に伸び盛りの投手が多く、昨年のドラフト会議で一番人気となった隅田知一郎を引き当てるなど楽しみな部分も多いが、他球団と比べると安定感に欠ける布陣であり、ブルペン陣のやりくりには苦労することになりそうだ。

 基本的には選手層から有利となる球団、不利となる球団を予想してみたが、その一方で首脳陣の采配も大きくかかわってくることは確かである。それを考えると不利な球団として挙げたヤクルトも、抑え投手出身の高津臣吾監督だけに、采配面ではプラスとなることも十分に考えられる。シーズンでは各球団の首脳陣がどのようなメンバーでブルペンを構成し、どう起用していくかについてもぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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