藤井聡太、A級昇級で名人奪取へ…恩師は「自活してしっかり将棋に取り組んでほしい」

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「そんなアホな」――。神戸に住む筆者は、3月10日木曜日の毎日新聞朝刊を見て目を疑った。朝日新聞には「藤井竜王、A級昇級 来期、名人挑戦権争う」と、将棋の藤井聡太五冠(19)の対局結果の記事が大きく出ていた。産経新聞と神戸新聞にも、昇級の記事が出ていた(読売新聞は記事自体が載っていなかった)。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

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 名人戦順位戦は現在、毎日新聞と朝日新聞、さらに日本将棋連盟の共催である。ところが、主催社のはずの毎日新聞には、「藤井A級かけ対局」とのタイトルで《最終13回戦が9日午前、東京と大阪の将棋会館で一斉に始まった》などの4段組の記事が出ていただけ。9日の夕刊と間違えたかと思って見直したが、間違いなく10日の朝刊。神戸で見た限りだが、毎日新聞も朝日新聞も産経新聞も、ともに最終版の14版である。藤井の対局は9日の午後11時ごろには終わったが、毎日新聞は印刷が間に合わなかったのだろうか。

 同紙のベテラン観戦記者・山村英樹氏の勝敗結果を含めた記事は、ネット版で間髪入れず配信されている。毎日新聞の知人に訊くと、「大阪では勝負が決した記事が載っている。神戸は印刷所の場所などの関係で間に合わなかったのでは」と話していた。神戸はそんな不便な田舎じゃないんだけど……。ともあれ、1970年代から「名人戦は毎日新聞」と思ってきた古い将棋ファンとしては、やや寂しい気持ちになってしまった。

 将棋の名人戦は、毎日新聞の前身である東京日日新聞が江戸時代からの世襲制名人を廃止した「実力制名人」を提案して始まり、1937年に木村義雄(1905〜1986)が初代の実力制名人となった。対局料や賞金などをめぐり紆余曲折を経て、現在は朝日新聞と将棋連盟が共催として加わった。

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