「鎌倉殿の13人」で注目の坂東彌十郎 “遅咲きの苦労人”の半生と転機

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 NHKの大河ドラマと梨園のつながりは長くて深い。

 放送が始まった昭和38年には江戸幕府の大老・井伊直弼の生涯を描いた「花の生涯」で二代目尾上松緑(故人)が主演を張り、その3年後の「源義経」では尾上菊之助(現・菊五郎=79)が義経を演じた。

 以来、歌舞伎役者の登場は続き、現在放送中の「鎌倉殿の13人」では片岡愛之助(50)、市川猿之助(46)、中村獅童(49)ら有名どころが揃い踏み。そんな中、にわかに注目を集めているのが、源頼朝の義父・北条時政を演じる坂東彌十郎(65)だ。

 ベテラン演芸記者が言う。

「歌舞伎では憎々しい敵役をはじめ、老け役や女形まで幅広く手掛け、毎月のように舞台に登場する名バイプレーヤーとして人気です。意外なことに、映画やテレビの連続ドラマに出演したことがなく、今回の大河ドラマが連ドラデビューとなりました」

高身長があだとなり…

 昭和初期に活躍し、梨園から銀幕に転じてスターとなった、同じ歌舞伎役者の坂東好太郎を父に持つ。

「戦前には時代劇にもキャスティングされ、長谷川一夫、高田浩吉と人気を三分した名役者。もちろん、『赤穂浪士』や『源義経』などの大河ドラマにも出ています。彌十郎は出演が決まると、“父と同じ大河に出られて夢がかなった”と喜んでいました」(同)

 とはいえ、念願成就までの道のりは長かった。斯界の関係者が後を引き取る。

「初舞台が17歳と遅くてね。しかも、183センチという歌舞伎界一の高身長。大御所たちより大きくて、舞台では彌十郎の方が目立っちゃう。どうにもそれが嫌がられて、なかなか“これ”という役に恵まれずにきた」

 足踏み状態の彌十郎に手を差し伸べたのが、旧知の先代・市川猿之助(現・猿翁=82)。バブル華やかなりし1980年代に宙乗りや早替わりなど、観客の度肝を抜く斬新な演出で人気を博したスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」に主役の強敵、熊襲(くまそ)兄タケル役で起用され、10年前に死去した幼なじみの中村勘三郎からは、コクーン歌舞伎や平成中村座で声を掛けられた。

「時政の妻・牧の方を演じる宮沢りえ(48)と勘三郎は、かつて不倫疑惑が報じられたほど深くて親しい仲。その関係で、彌十郎は以前から宮沢とも交流がある。初共演の二人が、息の合った掛け合いを繰り広げるのは、そんな背景があるからなんです」(先の記者)

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