プーチンとのパイプで注目も… 「マクロン」にフランス国民からの3つの批判
大統領選挙へのアピール
3つ目の批判は、3月に行われるフランス大統領選挙に関連してのもの。
国民連合党のマリーヌ・ル・ペンは、マクロンのロシア外交の失敗のみならず、「選挙活動の後押しをするためのアピール材料に利用している」と指摘しています。
フランスでは5年ぶりの大統領選挙を控えています。ウクライナの情勢も決して選挙と無関係ではありません。プーチンやウクライナのゼレンスキーと親交があるマクロンに続投を期待する声は当然あり、現在の世界情勢から見てもマクロンは有利といえます。
とはいえ、ロシア外交のためだけにフランス大統領を選ぶ道理もありません。「今の時期にフランス大統領選挙を実施するのは妥当なのか」という声もあります。
政治学者クロエ・モランはeurope1というメディアのインタビューで「ウクライナの紛争はマクロンにかなりの利益をもたらします」と発言しました。
「他の候補者はウクライナ紛争に関してマクロンのような経験も実績もないので、実力は未知数です。懸念されるのは、大統領候補にとって本質的な主題に関する議論が行われないことです」
マクロンが他候補より外交実績があることのアピールに終始し、選挙戦を進めようとしていることへの憂慮というわけです。
ただ、フランス人と政治の話をしていると、外交において利用できるものはなんでも利用するのが当然と考える人も多く、ロシアやウクライナとの関係を利用して選挙を有利に進めることに違和感はありません。
候補者討論を拒否し続けたマクロン
それでもマクロンは、次期大統領選挙の候補者の中で最も支持率が高い存在です。ただ3月3日に次期大統領選挙に立候補してから、国民やメディアから「テレビ討論をマクロンがすべて拒否している」という批判の声も上がっていました。
フランスではテレビ討論を見て、どちらが大統領に相応しいかを考える判断材料にすることが珍しくありません。フランス人は日常生活でもディベート好きな人が多く、大統領候補たちが繰り広げる激しい攻防は、この国の風物詩のような印象がありました。それをマクロンが拒否し続けてきたわけですから、「おかしい」「あり得ない」「自分の見てきた選挙でこんなのは初めて」と疑問の声が上がるのも当たり前。Quotidienというテレビ番組では、大統領の写真に「私は経験豊富です。そしてとても謙虚です」とのセリフをつけていました(これはフランスらしい皮肉で「とても謙虚だ」と言うことで、全然謙虚ではないと逆の意味に揶揄しているのです)。
ようやく3月14日になり、候補者たちが行うテレビでの演説会にマクロンが登場しましたが、やはり討論は避けています。討論がなくては、国民にとっては投票の判断材料に欠けるという思いもあります。マクロンは「望んでいたように(選挙)キャンペーンを行うことはできません」と語っています。ウクライナ侵攻で多忙なのは分かりますが、こうした対応が批判を集める要因になっています。
大統領選挙の第1回目の投票まで1カ月弱、マクロンの今後の姿勢が注目されます。
(敬称略)
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