新庄剛志、西岡剛、元木大介…記憶に残る“トリックプレー”を振り返る!

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“結果オーライ”だったが……

 最後は、隠し球を2度にわたって成功させ、“クセ者”の異名をとった巨人・元木大介の“結果オーライ”のトリックプレーを紹介する。

 01年7月27日のヤクルト戦、初回に1点を先制した巨人はその裏、1死二塁のピンチを迎える。この場面で3番・稲葉篤紀は、レフト・元木への浅い飛球。イージーフライに見えたが、元木はなぜか前進しかけて、一瞬躊躇する様子を見せ、最後は前に落としそうになりながら、かろうじてキャッチした。

 二塁走者・飯田哲也は、元木の危なっかしいプレーに誘われる形で飛び出していたが、元木がすぐさまノーステップスローで二塁に送球したことから、タッチアウトになり、目を白黒させた。

 いかにもクセ者らしい狡猾なトリックプレーと思いきや、真相は違っていた。

「薄暮で打球を見失った。焦った。あのスローイング(ができたの)は、内野(手)をやっていて良かった」(元木)

 ラッキーな併殺プレーでノリにノッた元木は、3回の打席では、左越えに満塁本塁打。しかも、これがセ・リーグ通算800本目のグランドスラムとあって、「1、2の3で思い切りいったで。久しぶりのホームランがこういう試合で出て、ほんまうれしいわ」とニコニコ顔だった。

 隠し球を成功させた試合では、いずれもチームは敗戦。隠し球を試みて、投手のボークを誘発させた苦い経験もある元木だが、企図せずして、トリックプレーの形になった試合では、攻守にわたってチームの勝利に貢献するのだから、これも“野球の不思議さ”である。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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