公安警察官に反面教師として教えられる「キャノン中佐」 250人殺害した男のロシアと共産党嫌い

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 日本の公安警察は、アメリカのCIAやFBIのように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、戦後、日本でロシア人など250人以上を殺害した米国の軍人について聞いた。

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 公安警察官の研修で、“反面教師”としてテキストに取り上げられる米国人がいる。終戦後、日本でGHQ(連合国最高司令官総司令部)直轄の秘密諜報機関に勤務していたジャック・Y・キャノン中佐だ。

「彼がいる諜報組織はキャノン機関と呼ばれています」

 と語るのは、勝丸氏。

「彼は東京都台東区の旧岩崎邸を拠点に、26人の部下と共に活動していました。任務は、日本の共産化を企てるソ連と中国に関する情報収集でした。キャノンは超愛国主義者で、共産主義とロシア人を毛嫌いしていたそうです」

 キャノンは、諜報員としてはきわめて優秀だったという。

250人以上殺害

「もっとも、組織の指示を守るような男ではありませんでした。彼は、1948年から1952年までキャノン機関を率いていましたが、その間にロシア人、中国人、朝鮮人など部下に命じたものを含め250人以上殺害したと知人などに語っています。これは軍の命令を完全に無視した行動です。そのため陸軍は彼を狂った男とみなし、追放したがっていました。公安部の研修では、組織の命令を無視して暴走したキャノン中佐のようになってはならないと教えられます」

 キャノンはロシア人を異様なやり方で殺害したという。

「彼は、ロシア人スパイを殺すときの様子を詳しく知人に語っています。引き金に触れたときの彼らの表情をつぶさに観察して楽しんでいたそうです。いくら何でも酷すぎます。頭がおかしかったのではないかと思います」

 キャノン機関は、ソ連だけでなく、中国や北朝鮮のスパイもターゲットにしていた。

「彼らを尾行し、素行を調べた上で、アメリカのスパイに仕立てるための工作をしていました。ときには拉致して脅迫することもあったそうです。旧岩崎邸の地下に監禁室や取調室を設け、そこで拷問をしながらスパイになることを強要したといいます」

 大抵は従ったそうだが、中にはスパイになるのを拒否した者もいた。

「その場合は、部下に命じて旧岩崎邸の地下にあったボイラーに生きたまま投げ込んで灰にしたといいます」

 にわかには信じがたい話だが、紛れもない事実だという。

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