ウクライナ侵攻時に取り残された中国人は6000人…プーチンに潰された習近平のメンツ
「敵の敵は味方」。反米姿勢で協調してきたロシアと中国だが、今回のウクライナ侵攻で蜜月関係に疑問符がつくような事態が起きた。ロシアの侵攻後、一時、ウクライナ国内に6000人もの中国人が取り残されてしまったのである。3月上旬になってようやく避難が完了したと伝えられているが、習近平国家主席はプーチン大統領から今回の侵攻をまったく聞かされていなかったのだろうか。
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戦争よりコロナの心配をしていた
日本政府は情勢が緊迫しつつあった2月11日に、ウクライナ全土の危険情報を最大レベルの「レベル4」に上げ、在留邦人に退避を求めた。チャーター便も手配。戦争前には、希望する自国民の退避はほぼ完了していた。欧米諸国も同様である。開戦の1週間前には、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、国連安全保障理事会で「侵攻が差し迫っている」と警告。世界中が今回の侵攻を予見している状況だった。
そんななか、6000人の中国人が逃げ遅れたというのである。中国とウクライナは経済分野で緊密な関係にあり、ウクライナ国内には多くの中国企業の駐在員やその家族、留学生などが在住していた。
「駐ウクライナ中国大使館がまったく避難を呼びかけなかったことが原因です。アメリカの言っていることは“フェイクニュース”だという姿勢を最後まで貫き通していた。他の国の大使館が『いずれここも閉じてしまうから早く逃げるように』と必死に呼びかけるなか、中国大使館だけが『コロナウイルスの感染には気をつけてください』などと呑気に呼びかけていたくらいだった」(中国在住のジャーナリスト)
陸路で命からがら
侵攻が始まった翌25日、中国大使館は慌ててチャーター便の手配に動き出したが、時すでに遅し。ウクライナが民間機の領空封鎖をした後だった。
「他国の大使館が閉鎖するなか、西部のリビウに残って、戦火にある東部の都市にチャーターしたバスを手配し、陸路での避難を支援し続けることになった」(同)
だが、避難を始めた在留中国人たちが気を配らなければならなかったのは、ロシア側から降ってくる砲弾ばかりではなかった。中国が対露制裁に加わらず、国連の非難決議でも棄権に回るなどロシア寄りの姿勢を見せていることを知ったウクライナ人たちが、これまで友好関係にあった中国人に対して敵意をむき出しにしてきたという。
「夜中に街を出歩くのも危ないくらいだったようです。中国人かと聞かれても、身分を明かさずやり過ごさなければならなかった。ようやく3月上旬になってあらかたの避難が完了したとのことですが、この間、一人が銃弾を受け負傷したと伝えられています。もし多数の死傷者が出るような事態になれば、国民の批判が政権に向かうリスクもあった」(同)
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