日本のマスコミや専門家の予想に反して…尹錫悦新大統領で日韓関係は改善する根拠

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進歩、革新でなく左派と報道せよ

 この真実を知れば、尹錫悦氏の「日本は重要な隣国だ」との発言が、相当な勇気だとわかる。対立候補だった与党の李在明氏は、「日本は信頼できない隣国だ」と述べ、左派系の世論におもねった。

 ここで私は、「左派」との表現を使っているが、左派とは北朝鮮を支持する勢力や追随者を意味する。でも、日韓のメディアは「進歩派」「革新勢力」としか書かない。なぜか。韓国のメディアは、韓国の「左派」勢力から批判や攻撃を受け、不買運動を起こされるから、「左派(左翼)」と書けない。

 日本のメディアは、その事情を説明せずに同じように表現する。独自の判断を示せない。文在寅大統領と与党は、北朝鮮の指導者に同調し支援するから、明らかに「左派」である。北朝鮮のミサイル発射に、「国連安保理決議違反」と率先して言わなかった。北朝鮮の同胞の人権侵害や政治犯収容所、韓国人拉致被害者に言及もしない。誰が見ても、北朝鮮支持の「左派政権」である。

 日本の新聞、テレビは韓国での報道に引きずられ「進歩」や「革新」と表現し、真実を報じる勇気がない。これは、報道の自由の放棄で、日本の危機だ。

 悪化した日韓関係を打開する方法はあるのか。尹錫悦新大統領は、「包括的解決」を目指すと繰り返した。方法はある。第一に「日韓労働共同市場」で、第二に日韓首脳会談や個別の閣僚会談の定期化だ。

 日韓関係改善のために、日本は「日韓労働共同市場」を構想すべきだ。労働の流動化である。韓国の若者は、就職難に直面している。その打開のためには、若者の日本企業への就職に門戸を拡大すべきだ。デジタル人材などの優秀な若者が日本人と日本文化を理解すれば、日韓関係は好転する。

 筆者が大学で教えた韓国人留学生は、「日本と日本人は、韓国で言われているような人たちではなかった。韓国は間違えているが、帰国してそんなことは言えない」と語った。日本語を覚え、日本の文化や歴史、生活を知れば日本を好きになる。「労働共同市場」には、日本語や生活慣習、文化の理解が不可欠で、そのためのシステムや支援策を作るべきだ。

日韓労働共同市場を

 かつて日韓閣僚会談が毎年開かれていたが、全斗煥政権で中断された。全体の日韓閣僚会談は必要ないとしても、首脳会談、2プラス2などの複数の閣僚会談を定期化する方法もある。

 また、個別の大学で行われている日韓大学の単位互換制度を拡大し、日韓の学生が双方の大学の卒業資格を得られるようにする。早稲田大学の学生が、高麗大学の学士や修士の資格を持つ。逆に、韓国の学生が双方の大学の卒業資格を持つ。

 韓国の新聞は、ネットで日本語での配信を行っている。日本の新聞も、韓国語版でのネット新聞を無料配信したら、韓国民の日本理解は格段に深まる。日本の新聞社独自で行うのが無理なら、政府や基金の支援を考えるべきだ。韓国民が、韓国のメディアだけでなく日本の新聞からの情報を得られる。

 竹島問題については、韓国側が日本を刺激せず無視すべきだ。多くの日本人は竹島に関心がない。韓国の閣僚が竹島を訪問し、竹島観光で日本を刺激するから、日本も対応せざる得なくなる。事実上占有しているのだから、騒ぎにしないとの大人の対応が必要だ。竹島で日本をからかい、日本人が反応し慌てる姿を見て快感を覚える小児病的な対応を止めるべきだ。韓国は日本と日本人を全く理解していない。ソクラテスが言う「知らないことを知らない」状態にある。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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