老化の原因にもなる「ゴースト血管」とは 第一人者がアンチエイジングのヒントを伝授

ドクター新潮 健康 長寿

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シナモンが酵素を活性化

 その他に、私が注目しているのは“シナモン”です。

 血管は、内側にある血管内皮細胞と、外側の壁細胞が密に接着していれば丈夫な状態が保てます。しかし、加齢などによって両者の接着が脆くなると、隙間ができて酸素や栄養分が漏れ出てしまい、ゴースト血管化に繋がっていく。ただ、血管内皮細胞にある“タイツー(Tie2)”という酵素が活性化されると、接着が強固になって血管の構造が安定することが分かってきました。

 私は大手化粧品会社との共同研究で、タイツーを活性化させる物質を調査しました。そして、200種類を超える天然由来成分のなかから探り当てたのが桂皮エキス、つまりはシナモンでした。シナモンの成分であるβシリンガレシノールに、タイツーを活性化させる働きがあることが判明したのです。

 たとえば、パウダー状のシナモンをチャイ(インド式のミルクティー)に振りかけたり、冬場はすりおろした生姜と合わせたシナモンジンジャーティーもお薦め。バナナやヨーグルトに振っても美味しいですよ。シナモンは大量に摂取すると肝機能に影響する可能性があるため、1日当たりの摂取量は0.5~1グラム、小さじ半分程度を目安にしてください。

「ヒハツ」とルイボスティー

 同じくタイツーを活性化させるスパイスとして注目されているのが“ヒハツ”です。聞き慣れない名前かもしれませんが、東南アジアに分布するコショウ科の植物で、ロングペッパーとも呼ばれます。日本では沖縄料理に使われ、最近ではスーパーのスパイス売り場でも見かけるようになりました。コショウと同じ要領で調理に用いれば効果的に摂取できます。

 さらに、健康茶として人気の“ルイボスティー”は、タイツーを活性化させるだけでなく、フラボノイドが豊富に含まれています。フラボノイドは活性酸素を中和して毛細血管の若返りを促す効果があります。飽きのこない味なので、ぜひ毎日飲んでもらいたいですね。

 ただ、食生活の改善で血管を安定させることはできても、ゴースト化を防ぐには不十分です。毛細血管の健康を保つには、常に血流を誘導し続けることが不可欠。そのためにはやはり運動が重要になります。ハードなトレーニングではなく、1日30分程度のウオーキングを毎日続けてほしい。

 人間の細胞は何歳になっても自己修復、自己再生するので、ゴースト血管を復活させることもできます。健康のためにも、アンチエイジングのためにも、毛細血管を鍛えて“老けない体”を目指してください。

高倉伸幸(たかくらのぶゆき)
大阪大学微生物病研究所情報伝達分野教授。1962(昭和37)年生まれ。組織再生やがん組織における血管研究の第一人者で、自ら命名した「ゴースト血管」に警鐘を鳴らしている。『ゴースト血管をつくらな33のメソッド』など著書多数。

週刊新潮 2022年3月10日号掲載

特別読物「『アンチエイジング』にも効果大 老化・万病の元 『ゴースト血管』を防ぐ」より

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