老化の原因にもなる「ゴースト血管」とは 第一人者がアンチエイジングのヒントを伝授
骨粗鬆症の原因はゴースト血管?
2014年に世界的な科学誌「ネイチャー」で発表された論文では、“骨粗鬆症(こつそしょうしょう)”の原因がゴースト血管にあることが明らかとなりました。
骨粗鬆症は、関節のクッション部分に当たる海綿骨が崩れることで起こる症状です。海綿骨の内部には毛細血管が密集しています。その血管がゴースト化することで、新陳代謝を促すホルモンや酸素、栄養が十分に行き渡らず、骨が生まれ変わることなく、徐々に擦り減ってしまう。結果、骨粗鬆症が発症するというメカニズムです。
特に女性の場合は、骨粗鬆症への注意が欠かせません。というのも、女性は閉経後にエストロゲンというホルモンの分泌が止まるからです。エストロゲンには、骨の細胞に新たな骨形成を促すシグナルを送る血管内皮細胞を保護する働きがあり、これが分泌されないと、ゴースト化が急激に進んでしまいます。男性と比べて女性に骨粗鬆症が多いのは、そうした背景があると考えられます。
骨粗鬆症は、毛細血管のゴースト化によって“必要なものが届けられない”ために引き起こされます。他方、“余分なものを回収して排出する”という、もうひとつの重要な機能が損なわれることも大きなリスクに違いありません。
見た目の老化にも関与
そうしたリスクの代表格が“認知症”です。実は、ゴースト血管は、認知症全体の半数を占めるアルツハイマー病の原因のひとつに数えられているのです。
人間の脳はアミロイドβというたんぱく質を常に分泌しており、これが過剰に蓄積しないよう毛細血管が回収・排出しています。しかし、血管がゴースト化するとアミロイドβが排出できなくなり、血管の周囲に蓄積して血流が悪化。脳の神経細胞に栄養が行き渡らず、認知機能の悪化に繋がってしまう。
また、ゴースト血管は病気の治療にも悪影響を及ぼします。がん患者に抗がん剤を投与しても、血管がゴースト化していると、がん組織の深部まで薬の成分が吸収されません。健康のためにサプリメントを摂ったところで、毛細血管が正常に働かなければ栄養が行き渡りません。
さらに、毛細血管のゴースト化は、肝機能や腎機能の低下を招くとされ、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる糖尿病のリスクも高めます。
毛細血管という“道路”が整備されていないと、健康リスクは間違いなく増大します。同時に、血管の老化は、“見た目の老化”に関与していることも分かってきました。ゴースト血管を防ぐことは、アンチエイジングにも直結するのです。
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