なぜ日本だけ30年も賃金が上がらない? ビッグマック、賃金ともに韓国以下に
「安さ=正義」が刷り込まれるように
一見すると、これらの番組は庶民の生活に寄り添っているように感じるだろう。しかし、実は「安いニッポン」を悪化させて、庶民をさらなる苦境に追いやる罪深い番組ともいえるのだ。
一昨年、ワイドショーやニュースが「SNSでトイレットペーパーが不足するというデマが流れています」と報じたところ、そのデマの存在すら知らなかった消費者が、スーパーやドラッグストアに大挙して押し寄せ、買い占め騒動が起きた。このように、今なおテレビは大衆の消費行動に強い影響を及ぼすことがわかっている。
つまり、今のように朝から晩まで「激安」に大喜びして、称賛するような番組が大量に流されると、消費者の頭の中に「安さ=正義」という価値観が強烈に刷り込まれる。そして、少しでも割高と感じる商品やサービスを提供するメーカーや店に激しい憎悪を募らせて、徹底的に糾弾する「値上げヘイト」が横行してしまう。この結果、日本最大の課題「デフレ脱却」はさらに遠のき、庶民はより貧しくなっていくという構図の出来上がりだ。
要は「ケチ」
「値上げヘイト」の盛り上がりは既に日本のあちこちで見えてきている。例えば、マクドナルド(以下、マック)は2019年にメニューの約3割で10円の値上げをしているのだが、一部の消費者からネット掲示板やSNSで叩かれている。
〈いつからマックは高級路線になったんや・・・〉
〈昔250円ぐらいだったダブチーが今だと340円もするんだな チーズバーガーも140円やし ぼったくりすぎだろ〉
「十分安いじゃないか」と思うむきもあろうが、叩く側のロジックのひとつとして「昔はもっと安かった」というものがある。
1971年、日本に上陸したマックのハンバーガーは当初、着々と値上げをして210円にまでなったが、バブル崩壊後に低価格路線へと舵を切り、2000年にはなんと「65円」まで値下げして若者などから絶大な支持を受けた。
が、この「激安」アピールが「負の遺産」としてマックを苦しめ続ける。02年2月に80円に値上げをしたところ「高すぎる」と客が離れて売上高が激減し、半年後に「59円」にまで下げた。そんな「激安バーガー」時代のイメージを引きずる消費者からすれば、100円であっても「割高」なのだ。
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