落合博満、野村克也、原辰徳 まさかの奇策も…名将たちは“初の開幕戦”でどんな采配を見せたのか

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「ちょっと守備位置を変えただけでも」

 これに対し、長池は「あれ、と思ったよ」と戸惑いながらも、右中間に鋭く弾き返した。だが、門田博光が1、2歩右に動いただけで、難なくキャッチ。右中間真っ二つの長打が右飛になった。

 このパターンで3打席続けてリーグきっての強打者を封じた南海だったが、2対1とリードの8回2死一、二塁、4打席目の長池を一ゴロに打ち取った直後、落球をきっかけに逆転を許してしまう。だが、その裏、2死二塁で4番・野村が左越えに逆転の1号2ラン。4対3で見事本拠地開幕戦を白星で飾った。

 奇策がズバリ的中し、自らのバットで勝利のヒーローになった野村監督は「ちょっと守備位置を変えただけでも、バッターは考えるもんや。最後は面白いゲームになったな。お客さんも満足してくれたのではないか」とご機嫌だった。同年、南海は毎月安定した成績をキープし、前年最下位から2位に躍進した。

「粘り強く最後まで戦い抜く」

 一方、開幕から苦しい戦いを強いられたのが、2002年に巨人の15代目監督となった原辰徳だ。同年の巨人は、上原浩治、桑田真澄、工藤公康らの強力投手陣と「ミレニアム打線」を擁し、優勝の大本命だった。

 3月30日の開幕戦の相手は、星野仙一監督率いる阪神。初采配を前に原監督は「とにかく粘り強く最後まで戦い抜くという気持ちを忘れないようにしたい」と力強く語った。

 3年連続開幕投手の上原は、初回を3者連続三振と最高の立ち上がり。2回に桧山進次郎、4回にジョージ・アリアスに被弾したものの、8回3失点と試合をつくった。

 だが、自慢の打線が、阪神の先発・井川慶の緩急自在の投球にタイミングを狂わされ、8回まで清原和博のソロによる1点だけとかみ合わない。追いつめられた9回、松井秀喜、清原の連打で無死一、二塁と最後の粘りを見せる。1死後、阿部慎之助もショート頭上に快打を放った。

次ページ:「日々新なり」を体現した采配

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。