落合博満、野村克也、原辰徳 まさかの奇策も…名将たちは“初の開幕戦”でどんな采配を見せたのか
3月25日に開幕するプロ野球。今季は日本ハム・新庄剛志、中日・立浪和義、ソフトバンク・藤本博史と3人の新監督が開幕戦で初采配の日を迎える。そして、過去の名将たちも、新監督時代にそれぞれ開幕戦で一生記憶に残る初采配を振るっている。【久保田龍雄/ライター】
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3年間1軍登板のない川崎を
初采配の開幕戦で、いきなりビックリ仰天の奇策を用いたのが、2004年の中日・落合博満監督である。4月2日の広島戦、中日の開幕投手は、前年チーム最多の12勝を挙げた平井正史でも左右の両輪・川上憲伸、野口茂樹でもなく、なんと、右肩の故障で3年間1軍登板のない川崎憲次郎だった。
しかも、川崎先発を決めたのは、年明け早々の1月3日。「チームを生まれ変わらせるために、3年間最も苦しんだ男の背中を見せなければならない」という“オレ流”采配第1弾だった。
ヤクルト時代の00年10月6日の阪神戦以来1274日ぶりの1軍登板となった川崎は、2回にカープ打線の餌食となり、5失点KO。一か八かの賭けは裏目に出たかに思われた。ところが、このKO劇が、逆にドラ戦士の闘志に火をつける。その裏、「川崎が一生懸命投げていたから、何とか逆転してあげたかった」(立浪)とナイン一丸となって“天敵”黒田博樹に3長短打を浴びせ、2点を返す。
さらに、6回に追いつくと、5対5の7回に3点を勝ち越して、8対6の鮮やかな逆転勝利。負け試合を全員野球でひっくり返した中日は、開幕戦勝利の勢いをシーズン終盤まで持続して、5年ぶりセ・リーグ制覇を実現した。
日本一1回、リーグV4回の黄金期を築き上げた名将は、11年オフの退任時に「最初の1勝がなければ、あとの勝ちもない。一番印象に残っているのは(04年の)、一番最初の勝利だ」と回想している。
外野4人がほぼ等間隔で守る“長池シフト”
“奇策”といえば、34歳でプレーイングマネージャーに就任した南海時代の野村克也監督も、1970年の本拠地開幕戦で、あっと驚く采配を見せている。
4月11日の開幕戦(ロッテ戦)が雨で中止になり、翌日にダブルヘッダーで開幕戦を迎える珍事を体験した野村監督は、2試合目での監督初勝利にも「別にそのことは、どうってことない」とそっけなかった。
実はこの日も雨予報だったのだが、野村監督は前日の時点で「このままロッテ戦が雨で流れ、14日の阪急戦が開幕ということにならんか」と、前年覇者を相手にした本拠地・大阪球場の開幕戦で「何かやる」と思わせぶりな口調だった。
そして迎えた14日の阪急戦、2回表の開始直後、スタンドから大きなどよめきが起きた。阪急の4番・長池徳二が打席に入ると、捕手・野村は野手陣に向かって右手を挙げ、「バック」と合図した。
すると、セカンド・古葉竹識がライトの守備位置へと走る。さらに野村監督は本来の外野手3人に「もっと左へ」とジェスチャーで指示。外野4人がほぼ等間隔で守る“長池シフト”を敷いた。
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