記憶に残った銅メダリスト「ジャネット・リン」 審判として復帰した理由は(小林信也)
フリーを支える基礎
北京五輪では、15歳のカミラ・ワリエワ(ロシア)のドーピング問題に端を発し、年齢制限の引き上げが検討される流れになっている。フィギュアのいびつな現状を打開するのに「年齢制限」はひとつの策に違いない。が、もっと重要なのは、フィギュアスケートが一体どんな方向性を目指すのか。確固たる理想に基づいて審査の基準を理想を持って改めることが前提ではないか。15、16歳では容易に頂点に立てないような深みが求められる方向性を創りだせば、自ずと健全化が進むのではないだろうか。
“元祖フリーの申し子”ともいえるジャネット・リンならどう考えるだろう? きっと「いまなら金メダルが獲れたのに」と、そんな思いでその後の五輪を見ているのではないか。そう考えるのが自然だが、違うようだ。5年前、ジャネット・リンの興味深い近況を産経新聞が伝えている。
〈リンクから離れ、母として5人の子供を育てたリンは昨年12月、審判として久しぶりにスケート界に復帰した。その舞台に選んだのは、コンパルソリーだけで競う第2世界選手権〉
ステップやエッジワークはフリー演技を支える重要な基礎。だが、選手たちも軽視しがちだ。それを若い選手に意識づける目的でコンパルソリーの大会が始められ、ジャネット・リンも積極的に賛同している。
フリー1位で銅メダルは悔しかったろうが、彼女の場合はその経験がたくさんの幸せな記憶と結びついている。
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