トルコやフランス、イスラエルではなく…ロシアとウクライナの仲介役はインドが適任の根拠

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インドへの「期待」

 中国が仲介役を引き受けなければ、ロシアが交渉相手として認める主権国家は「非同盟外交」を標榜するインドのみとなる。

 インドは日米豪との協力枠組み「クアッド」に参加しているものの、これまでのところロシアに対する中立姿勢を崩していない。冷戦以来、最大の武器供給国であり、中国やパキスタンが領有権を主張するカシミール地方についての自国の路線を支持しているロシアとの関係をインドは無碍にはできないからだとされている。

 米国ではインドの対ロ協調姿勢に対する批判が生じつつある(3月10日付日本経済新聞)が、欧米諸国と良好な関係にあり、ロシアとの関係も深いインドこそが仲介役としてふさわしいのではないかと筆者は考えている。

 約2万人のインド人(多くは医学)が滞在しているウクライナでの人道的危機について深い懸念を抱くインドのモディ首相は7日、プーチン大統領に対して現在行われている停戦交渉に加え、ゼレンスキー大統領と直接会談を求めた。モディ氏は現段階で「仲介役になる」とは表明していないが、インドの専門家からは「自国が大国であることを認識し、ロシアとウクライナの仲介者になるべきだ」との意見が出ている(3月9日付産経新聞)。

 19日からインドを訪問する予定の岸田総理は、モディ首相との会談でインドがロシアとウクライナの仲介役を積極的に担うよう要請すべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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