トルコやフランス、イスラエルではなく…ロシアとウクライナの仲介役はインドが適任の根拠

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 ロシアとウクライナの外相が3月10日、トルコで1時間半にわたって会談した。ロシアのウクライナ侵攻以来、最もハイレベルの当局者による直接協議となったが、両国の主張の隔たりは大きく、進展はなかった。ウクライナ側は条件が整えば再会談に応じる考えを示したが、今後停戦に向けた具体的な協議が行われるかどうかは定かではない。

 トルコが仲介に乗り出した最大の理由は自国経済の打撃を回避することだ。会談が行われたアンタルヤには毎年ロシアやウクライナから多数の観光客が訪れており、軍事紛争が長期化すればトルコの観光産業は大打撃を被る(3月10日付日本経済新聞)。

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、近年ロシアとも軍事・経済面での関係を強化している。しかし、ロシア軍の侵攻抑止の効果を発揮したとされる無人機(ドローン)を提供したのはトルコのエルドアン大統領の娘婿が経営する企業であり、シリアやリビア内戦などではロシアと激しく対立している。

 ロシアとウクライナの仲介役を買って出たのはトルコだけではない。イスラエルやフランスも名乗りを上げている。

 イスラエルのベネット首相は5日、プーチン大統領と会談し、停戦交渉の仲介を提案した。詳細は明らかになっていないが、イスラエルメディアは2月下旬「ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアとの交渉の仲介をベネット氏に依頼した」と報じている。

 欧州連合(EU)議長国であるフランスのマクロン大統領もプーチン大統領と電話協議を数多く実施しているが、各国の仲介外交が奏功するかどうかは現時点では不透明だと言わざるを得ない。

 自業自得とは言え、ウクライナ侵攻によって窮地に追い詰められたロシアは、信頼に足ると判断する国からの申し出でなければ仲介に応じることはできないからだ。

 現在のロシアには旧ソ連が誇っていた「共産主義の総本山」というソフトパワーはなく、経済力も韓国と同程度に過ぎない。世界第2位の戦略核戦力を保有するなど軍事力が依然として強力であることが唯一の誇りだ。

 このような現状からロシアでは「力の有無が主権の有無に直結する」との理解が支配的となっており、自国の安全保障を他国に委ねない国を「主権国家」と位置づけ、交渉相手としてふさわしいと考える傾向が強い。

中国の仲介は…

 ロシア流に解釈すれば、国際社会には主権国家はそれほど多く存在しない。

 プーチン大統領はかつて「ドイツは主権国家ではない」と述べた。ドイツは安全保障をNATOに依存していることから、NATOの盟主である米国によって主権が制限されているというのがその理由だ。この理屈で言えば、米国と同盟関係を結んでいるトルコやイスラエル、フランスも主権国家ではない。主権国家とは見なせない国々が仲介を申し出たとしても、ロシアの命運を委ねるわけにはいかないだろう。

「プーチン大統領と個人的な信頼関係がある安倍元首相を特使としてロシアに派遣すべきだ」との論調が出ているが、残念ながらロシアは同様の理由で日本を主権国家とはみなしていない。安倍元首相が会談を申し出れば、プーチン大統領は喜んで応じるだろうが、仲介役としては扱わないと思う。

 プーチン大統領が主権国家と考えているのは、米国を除けば、中国とインドだ。

 ロシアのウクライナ侵攻が長引くにつれ、国際社会から「中国が影響力を行使して仲介を行うべきだ」との声が高まっている。ロシアの戦略的パートナーである中国は、欧米などの経済制裁に参加していない。金融や物流などでロシアの命綱になっており、影響力を発揮できると期待されているからだ。

 だが、中国の王外相は7日「必要な時に国際社会とともに必要な仲裁をしたい」と述べるにとどめ、時期と具体策については言及しなかった。中国の思惑は明らかではないが、仲介役としての最大の問題は米国との関係が良好でないことだ。ロシアのウクライナ侵攻で米国との関係がさらに悪化しつつある中国にとって「仲介の労をとるのは勘弁してほしい」というのが本音なのかもしれない。

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