プーチンが持つ「核バッグ」とは 過去にミスで「核のボタン」が押された危機が
ブリーフケースのような「核バッグ」
問題は、このような人物が核のボタンを握っていることだ。
ロシアは言わずと知れた世界トップの核保有国。プーチンは今回の戦争に当たっても、その使用をほのめかしている。市街地への使用はもちろん、威嚇のために海や山に落としたとしても、アメリカやNATOが黙っているわけはない。破滅のシナリオが見えてくるが、加えて、
「恐ろしいのは、ロシアの核兵器の管理体制です」
と中村教授が言う。
「ロシアでは、大統領、国防相、参謀総長の三人がそれぞれ、ブリーフケースのような『核バッグ』を持っている。その中に核の発射に必要なさまざまなボタンがあるのです。危険を察知すると、それぞれが連絡を取り合い、使用が決定すれば発射コードが打たれ、軍が実行に移すのです」
過去にボタンが押された“事件”が
実は過去にこの核バッグが開かれ、ボタンが押された“事件”があった。1995年1月のことである。
「ノルウェーがオーロラ観測のために衛星を打ち上げたのですが、それをロシア軍は、ノルウェー沖で活動していたアメリカの潜水艦が打ち上げたものと勘違いした。慌てた当時のエリツィン大統領は国防相らを呼び、核の起動コードを送信した。しかし、なぜかシステムが上手く作動せず、人類は事なきを得たのです」(同)
この“危機”は後に「ノルウェー・インシデント」と名付けられている。
「問題はなぜ、このような誤りが起きてしまったのかということです」
と中村教授。
「ロシア大使館はノルウェー政府から衛星発射の連絡を受けていたのですが、外務省にそれを伝えず、結果、国防省や軍にも伝わらなかった。この機能不全が原因です。現在もこの核バッグのシステムの基本は変わっていないはず。しかし、平時ですらこの有様ですから、戦争下、何かのアクシデントでこうしたシステムが動き出してしまう恐れは拭(ぬぐ)えません」
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