ウクライナ侵攻で問われる「戦時経済力」 日本は「新しい資本主義」なんて言っている場合じゃない

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経済戦略を一変しなければ

 そんな中で、日本はかつてない経済不振に陥る覚悟ができるのか。前出のジャーナリストが「総理以下、政治家の覚悟が必要だ」と語る。

「覚悟に加えて、どう経済運営していくのかという戦略でしょうか。岸田首相は就任以来、『新しい資本主義』を掲げていますが、結局、具体的な中味はここに至っても見えて来ません。首相が話すのは、分配を増やせば成長するという何の根拠もないキャッチフレーズだけです。社会全体に貢献する、弱者を助けていくと、夏の参議院選挙に向けて国民の耳に心地よい話だけをして議論になる事は言わない、という姿勢が見える。今、ウクライナ戦争で経済戦略を急遽一変させなければなりません。しかし、何ら新しい手は打ち出せていないという状況です」

 証券系のエコノミストも言う。

「岸田首相が就任した10月以降、株価が大きく下落しています。岸田首相が言う分配重視では日本の成長力は戻らないと、海外投資家を失望させたことが一因です。ポスト・コロナに向けた回復力で日本は他の先進国に比べて大きく劣後していると見られており、加えてそこにウクライナ侵攻とロシア制裁による世界的な経済縮小の波がやってきます。日本の経済力は一段と悪化しかねません。『新しい資本主義』を議論するのは良いのですが、これはあくまで『平時』の話です。『戦時』の経済戦略として、何を甘いことを言っているのか、と市場は反発するでしょう」

消費税を下げることも

 ロシアとの「経済戦争」に備えて、日本の国力、経済力を立て直すことが重要だと言うのだ。そのためには、何ができるのだろうか。

「石油元売り会社に補助金を出して価格を抑えようというのは焼け石に水ですね。いくらカネがあっても足りませんし、市場に国家が挑んでも勝てるものではありません。逆に、値段が上がることで需要が減るのを容認するしかないのではないでしょうか。もちろん、エネルギーコストが上がれば生活困窮者も増えます。それを支えるためには期限付きで消費税率を思い切って下げることも検討すべきです。本当に困っている人たちには、一律10万円などの給付金をあと何回か支給する必要が出てくると思います」(同)

 前出のジャーナリストもこう嘆く。

「長年の円安政策で、日本円の購買力は大きく落ちました。政府がこれ以上円安政策を続ければ、国が貧しくなり、エネルギー輸入負担がさらに増します。むしろ日本の経済成長を促して通貨を強くし、国力を高めることが重要ではないでしょうか。しかし、『新しい資本主義』の目指す経済の具体策が出てこないのを見ても、どうも岸田内閣には経済に明るい戦略家がいません。それこそが、本当の日本の危機かもしれません」

デイリー新潮編集部

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