実子1人殺害、3人が不審死… 凶行に及んだ母の「異様な小動物愛」

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「代理ミュンヒハウゼン症候群」という耳慣れない病名で注目を集めた今回の事件。だが、子どもたちが次々と不審死を遂げる一方、虐待の兆候は見られなかった。少女時代に経験した両親との死別、ペットに向ける異様な愛。凶行に及んだ母親の原風景に迫る――。
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「やっと息子が帰ってきてくれるんです!」

 声を弾ませてそう語った上田綾乃(42)の笑顔を、元勤務先の上司はいまでも忘れられないという。

 2018年11月に、上田は念願だった次男との生活を取り戻した。だが、その約8カ月後、小学校に入学したばかりの息子は命を落とす。彼女がお腹を痛めて産んだ子どもを亡くすのは、これで“4度目”だった。

 そして、今年2月20日、次男・雄大君(7)=死亡当時=を殺害した容疑で、上田は神奈川県警に逮捕されたのである。

 社会部記者によれば、

「19年8月、上田は自宅から“テレビゲームをしていた息子が突然、胸の痛みを訴えて、動かなくなった”と119番通報をしています。雄大君は搬送先の病院で死亡が確認されました。上田は内縁の夫と雄大君と共に大和市内のアパートで暮らしていましたが、事件当時、家にいたのは母子ふたりだけでした。しかも、司法解剖の結果、窒息死の疑いが浮上し、後頭部には顔を強く押さえつけられたことを示唆する皮下出血も確認された。県警は、上田が息子の鼻と口を塞いで殺害したものと判断して逮捕に至ったのです」

続く不審死

 上田は、前の夫との間にもうけた長男を02年に生後5カ月で亡くし、翌年に生まれた長女も生後1カ月で急死。長男は「ミルクの誤嚥による窒息」、長女は「乳幼児突然死症候群」が死因とされた。17年4月には雄大君の弟に当たる三男も、死因不明のまま1歳5カ月でこの世を去っている。雄大君と三男の父親は内縁の夫だ。

 ここまで不審死が続けば、県警が上田に疑いの目を向けるのは当然だろう。

 事実、彼女の半生には常に“死”の影が付きまとう。

 横浜市瀬谷区にあった彼女の実家近くの住民からは、こんな声が聞こえてくる。

「綾乃さんは両親と弟ふたりの5人家族でした。ただ、彼女が横浜市内の商業高校を中退した頃、お父さんが職場で倒れて、そのまま帰らぬ人に。お葬式に参列したら、明るい性格のお母さんが意気消沈していて……。それから2年ほど経って、今度はそのお母さんにがんが見つかったんです」

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