小康状態のウクライナ侵攻 「原発」の次にプーチンが狙う「物流の要」オデッサ港

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 三方向からウクライナに侵攻を開始したロシア軍だが、ウクライナ軍の抵抗が激しく、膠着状態が続いている。3月10日には、トルコの仲介で初めて両国外相が交渉するが、「100%決裂するでしょう」(ロシアの軍事事情に詳しい専門家)。泥沼化しつつある戦局は、この先どう転ぶのか。専門家は「キエフ決戦にばかり注目が行っているが、国内最大の物流拠点であるオデッサ港を死守できるかも重要だ」と解説する。

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マリウポリ

 3日に南部の主要都市・ヘルソンが陥落して以降、両軍の間で激しい衝突は起きていない。アゾフ海に面した南部の都市・マリウポリでの攻防が伝えられているものの、ロシア軍に抵抗を見せているのは市民兵が中心だと言われている。マリウポリは、ロシアが支配下におく東部2州とクリミア半島の中間地点。ここが落ちれば、ロシア軍のアゾフ海における支配が進むとあって、ウクライナ側の必死の抵抗が続く。

 北部、東部戦線も膠着状態が続いていたままだ。ベラルーシからは、軍事演習をしていた部隊がそのまま南下してキエフに向かったが、北方30キロくらいのところで止まったまま。東の部隊は、ウクライナ第二の都市・ハリコフの背後から侵入したが、ハリコフを落とせないまま一部が包囲し、他の部隊はキエフに向かった。だが、ここでも東方60キロのところで留まっている。

 なぜ世界2位の軍事力を誇るロシア軍がかくも苦戦を強いられているのか。ロシアの軍事事情に詳しい専門家は、「補給がうまく行っていないからだと思われます。士気の低下も影響しているでしょう」(以下、同)と語る。

ウクライナ側が条件を飲む可能性はゼロ

 10日ようやく実現する外相会談については、「トルコのエルドアン大統領の国際社会における存在感を高めるだけのセレモニーで終わるでしょう」と悲観的だ。

「プーチンが要求を下げるとは到底思えません。2014年にウクライナから一方的に独立宣言した親露派の支配地域は東部ドネツク、ルガンスク両州の一部でしたが、戦争開始後、プーチンは両州全域で親露派の主権を認めることを条件にし出した。ウクライナ側がこんな条件を飲む可能性は皆無で、戦争は継続されるでしょう」

 マリウポリとハリコフの陥落は時間の問題。では、次にプーチン大統領はどこを狙うのか。専門家は「キエフばかりが注目されていますが、南部の要衝であるオデッサに向かう可能性がある」と予想する。

「いよいよ本格的な首都攻防戦になる見方をする人の方が多いのは事実です。でも、ゼレンスキー大統領はいくら欧米諸国が脱出するよう勧めても、キエフに残ると明言しており、壮絶な戦いになることが予想されます。ロシア兵も甚大な被害を受けるはずで、そこはプーチン大統領としても避けたいはず。プーチンは圧勝が好きなんです。クリミア侵攻のときも、ロシア軍は一発も撃たないで全部乗っ取って、ロシア国民を喜ばせた。本当はキエフを無血開城させたい。それを可能とするのが、ヘルソンから西方約200キロの地点にあるオデッサ攻略なのです」

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