女好きの義父に“洗脳”され…不倫にハマったアラフィフ男 待ち受けていた衝撃の真実

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夫が遊んでいれば妻だって…

 なにやら負のスパイラルに突入した邦和さん。そんなとき、妻の葉子さんが繁華街のオープンカフェで「若いイケメン」と手を取り合うようにして語り合っているのを目撃してしまった。

「僕が恋にうつつを抜かしていたら寝取られたのかと愕然としました。それとなく義父に言いつけたら、『だから大人になれと言ってるだろう』と言われた。娘の不倫を放っておいていいんですかと思わず責めるような口調になりました。義父は『夫が遊んでいれば妻だって遊ぶさ』って」

 何がなんだかわからなくなった邦和さんは、帰宅してから葉子さんに「先日、きみが若い男と……」と言ってみた。

「ああ、あれ。最近知り合ったテニスのコーチ。いい男だったでしょ。しゃべっていただけよ。何か問題ある?」

 まったく悪びれていないその言い方に「いや、何も」と言うしかなかった。すると葉子さんは、「私はあなたと違って、よその異性にはまったりしないから」とさらりと言った。

「『遊ぶならきれいに遊んでちょうだい。じたばたしたり自分で尻拭いができないようなら、何もしないほうがいいわよ』って。怒っているわけじゃないんです。本当にさらりと言う。それが不気味でたまらなかった。どうしてそんなふうに言えるのかと聞いたら、『夫婦はストレスをためずに外で発散、家庭内が穏やかにうまくいけばそれでいいじゃないの』と。あの義父にしてこの娘ありなんだとよくわかりました。聞けば、どうやら義母もホストクラブなどに行って適当に遊んでいるらしい。葉子も『ホストクラブ、楽しいのよ。私は母ほど熱心にはなれなかったけど』とこれまたさらりと言う。義母は家業を夫に継がせて、自分は新たに会社を興した凄腕の人。だから母は自分のお金を好きなように使って遊んでいたのよとも言っていました。義父にはそういうストレスもあって遊び始めたのかもしれない。いずれにしても、この家の価値観がわからなくなりました」

 本当にそれでいいと思っているのかと、彼は葉子さんに何度も聞いた。

「『言っておきますけど、私は不倫はしてないの、あなたと違って』と葉子は言うんです。不倫はダメだけど遊びならいいということなのか、性的交渉さえなければいいのかはよくわからない。今思えば、僕は自分がしたことが家庭のルールに違反すると反省しています。性交渉があるなしの問題でもないと感じている。だけど、葉子にはそういう価値観がないんです。そのほうが問題じゃないですか?」

 一夫一婦制で貞節を守るべきという民法に基づけば「不倫はいけない」のかもしれない。そして実際、性的交渉がない限り、判例上、不倫と認められないことも多い。だから葉子さんの「不倫はしていない」は法令上も認められるだろう。一方の邦和さんの行為は明らかに「不倫」である。ただ、人の価値観はそれぞれだ。葉子さんは夫の不倫をさして気にしていないが、邦和さんは妻が「性的交渉はともなわないが男と会っている」ことにショックを受けている。

「こんなふうに節操のない家庭にいていいのかと思います。それ以上に、家庭内には何ら波風が立っていないことがもっと怖い」

 それをあなたが言う? そんな疑問もわきながら、邦和さんの心のモヤモヤも少しだけ理解できるような気がした。彼自身、自分が持っていた価値観がひっくり返されたことで気持ちの整理がつかなくなっているのかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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