年に1度の楽しみ「BSキャッ東」を振り返る 藤あや子は毎年出てほしい! 

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 猫飼い歴は約32年。小学生のときに拾った初代の猫(白黒)は皮膚がんで亡くなったが、最期を看取ることができた。2代目(キジトラ)は20年生きて、遺骨を五島列島の奈留島(なるしま)でアコヤガイに託す「真珠葬」にした。未だこの連載タイトルの絵にいるのが彼女だ。そして、今は静岡の保護猫カフェでひとめ惚れした2匹のきょうだい猫(白黒)がいる。そもそも日々猫(毛)まみれなのだが、2022年2月22日は、さらに猫まみれになろうと決意していた。

 早起きして、まずは抽選予約した「ネコの日バッグ」を取りにカルディへ(紅茶と菓子とティーポットが入った丈夫な布バッグ)。いわゆる福袋ね。帰宅後、テレビをつける。この日はBSテレ東が「BSキャッ東」になる日。BSジャパンの頃から「BSニャパン」と称して猫ファーストな編成を仕掛け、公平さを著しく欠く放送をしてきたテレビ局だ(たぶん犬派は地団駄&歯ぎしり)。今年はじっくり鑑賞と思って、ほぼ半日、テレビの前に陣取る。

 まずはアニメから。テレビ局ADの過酷な労働実態を描いた「オンエアできない!」。主人公のADまふねこが微妙にやる気がなくて、かわいくないのがツボ。

 ドラマは小西桜子主演、新米記者が看板猫を取材するという「かんばん猫」だ。取材時の質問の甘さにつっこみまくる。私の中では「猫の日俳優」である田中要次が、今回は書店の店主役。猫とおじさんの組み合わせでは、最も印象の乖離があってよかったんだけどなぁ。

 で、猫飼いの目と心をとらえたのが「ニャンとも嬉しいモノがたり」。要は猫グッズ紹介の番組だ。開発秘話を聞いちゃうと、もう欲しくなって。3商品のうち2商品をぽちっと購入(ひとつは既に持っていた)。

 おっと、この調子では全部に触れるのは無理。最も興味深かったのは、夜に放送した「猫のこと、ちゃんと考える」だった。フリーアナの住吉美紀が進行、ゲストは歌手の藤あや子。無類の猫好きふたりが猫にまつわる課題を考えるという一見地味な番組だ。そうそう、藤の愛猫マルとオレオは、今年の猫社長として、メインキャラクターに任命。

 もともと藤のTwitterの文言が面白く、しかも2匹が美猫なのでフォローしていたが、ここでの発言も期待通り、面白かった。BSキャッ東のレギュラー確定ね。

 課題は三つ。猫の腎臓病治療薬ができれば、寿命が30歳になるのも夢ではないという話(夢どころか数年後には完成予定)、交通事故を減らすために猫の行動心理学を知る、そして殺処分と保護猫について。もうね、保護猫ボランティアさんには頭が下がるし、住吉&藤が泣くんだよ、不憫な猫の映像で。それを観ている私も泣くんだよ。もう、猫おばさんがもらい泣き。一体化しちゃったよ、テレビの中の人と。久しぶりに。

 半日猫まみれを終え、耳の奥に残ったのは頻繁に流れたCMソング。♪ちゅっちゅるちゅー、が脳内でリピートする地獄。でも猫飼いの猫馬鹿っぷりを利用したあのCM制作システムは凄い。考えた人を尊敬する。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年3月10日号掲載

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